劇場公開日 2011年7月30日

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「逃げまくる男」エッセンシャル・キリング たいちぃさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5逃げまくる男

2023年2月14日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

ある男が逃げて逃げて逃げまくる物語。
とにかく「自分が生き延びること」しか考えていない男は、ヘリコプターや兵士や犬の群れに追われても逃げる。他人を殺しても逃げていく……。
イエジー・スコリモフスキ監督作品。

映画では詳細な説明を排除して、主演のヴィンセント・ギャロには一言も喋らせず、共演のエマニュエル・セニエ(ロマン・ポランスキーの妻で女優)もセリフ無し。

どこか中東のような砂漠地帯が空撮で映り、一人の男が追跡されている。男は地上で追ってきた男達をバズーカ砲で爆死させるが、捕らえられる。軍の基地で痛い目に遭わされ、車でどこかに搬送される途中で車が崖から落下。男は事故のどさくさで逃げ始める。しかし、兵士たちと犬の群れに追われ、雪の中・激寒の中を逃げまくる。そして……という流れに終始するが、アチコチで男の周囲での出来事を描いており、単調にならない演出の上手さ。

今回観たDVD(紀伊国屋書店)の特典映像で、スコリモフスキ監督が本作キャンペーンのために来日した姿が映されていて、学生たちの前でのトークショー/京都の寺を次から次へと巡る姿/インタビューなどを見た。
日本には、(当時の時点で)数回目の来日だそうだが、スコリモフスキ監督がこんなに親日派だとは思わなかった。
スコリモフスキ監督が好きな監督は「3人いる」とのこと。
真っ先に挙げたのは「黒澤明」。その他2人は「オーソン・ウェルズ」と「フェデリコ・フェリーニ」とのこと。
特典映像では、都内の「黒澤」という店?で「黒澤明の描いたイラスト」を見るスコリモフスキ監督の姿。……イラストは『まぁだだよ』などが映っていた。

「逃げるためには、自分本位が最優先とする」あたりは、ロマン・ポランスキー監督の『戦場のピアニスト』に似ている。
スコリモフスキと妻(エヴァ)は共同脚本・共同製作で映画を作っており、ポランスキー夫妻(妻は本作出演)と家族ぐるみの付き合いらしいので、通じるものがあるのか…。
(余談:社会人になってから、拙筆の映画評がキネマ旬報に初掲載されたのが『戦場のピアニスト』であった。)

スコリモフスキ監督の本作は、時々、ハッとするような美しい場面も見られる良質の映画だった。

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たいちぃ