おじいさんと草原の小学校のレビュー・感想・評価
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大人が見たほうが響くかも
文科省推薦になりそうな作品。
海外への経済援助で「日本人はなぜ学校ばかり作るのか」と言われるそうだが
その理由はここに集結している。
文盲のおじいさんが手紙を読めるようになりたい、それだけの映画と思いきや、
おじいさんはケニアの独立運動にも絡んでいて、
複雑に部族間の反感も現在まで続いていることがわかる。
しかしケニアの未来を担う子供たちは部族間で争っていてはいけない。
大人たちの黒い歴史を背負わせないためにも
子供たちへの教育は必要なのだ。
卑怯な父の姿を見て息子はいったいどう感じただろう。
一方マルゲは誇り高い戦士であった反面、
他人をなかなか心から信用できない頑ななところがあった。
それが「なにがなんでも自分で手紙を読まねばならない」といった考えに顕れている。
そんな彼が、手紙を読んでくれと頼む。
小学校に通ったことで、
マルゲの中で氷解ともいえる人間的成長があったことを示す
いい場面だったと感じた。
手紙の内容はそれまで語られた過去が
さらに想像を絶する長い苦痛であったと知れる悲しいものだったが。
重い過去がありながらも、
作中の人物達、マルゲも教師も子供たちも表情は明るい。
教育によって可能性の扉が多く開かれた、
未来へ向かっている眼差しには観ていて深い感動を覚えた。
最年長小学生の壮絶な人生
キマニ・マルゲ84才の小学生で最年長ギネス認定、男性の平均寿命が59才(2014年統計)と言うケニアでは稀なご長寿なのでしょう(2009年、90才胃癌で死亡)。
映画はいわばドキュメンタリーを役者が演じているとした方が分かり易いでしょう。ジェーン先生のナオミ・ハリスは英国の女優さんですがマルゲを演じたオリバー・リトンドはケニア生まれで元BBCの特派員でしたからマルゲへの思い入れもひとしおだったでしょう。
人格の礎となる初等教育の重要性は言うまでもないのですが英国統治時代の圧政に加え部族抗争の絶えないお国柄ではその役割は極めて大きいでしょう。
実話と言うことで感慨深いがマルゲは30人の孫がおり、その内の二人と学校に通ったと言う記事(ウィキペディア)を見た、映画では妻子は英国の入植者に殺されているので意外であった。
映画では読み書きの動機は手紙にあったようだが、彼は聖書を読みたかったという説もあり、90才でカトリックの洗礼を受けStephenというクリスチャンネームを得ています。壮絶な人生、不屈の人柄に圧倒されました、最後の子供たちとの輝かしい学校生活は神様からのご褒美にも思えます。いわば英国の暗黒史を英国が映画化したということも意味深いですね。
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