アリス・クリードの失踪のレビュー・感想・評価
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ラストで分かる『失踪』の真意。
これ、感心したのが登場人物たった三人なんですよねぇ。
彼らの会話で他の人物の存在は認められるんですけど、本編には一切登場しない。飽くまで、設定が分かる程度。
室内だけじゃなく、ロケも結構多めなのに、エキストラや通行人すら映り込まない。雑踏も聞こえてこない。
不自然なぐらいのこだわり様w
ストーリーも舞台劇を思わせるというか、密室で巻き起こる三者三様の思惑。嘘つき合戦。セリフとアクションを見事に駆使して、完成度高く仕上げています。
そして、邦題の『アリス・クリードの失踪』に込められた真の意味。
アリス・クリードが誘拐される訳だから“失踪”なんだろう?…と、思いきや―という、なかなか粋なラストでちょいと唸りました。
総括すると“低予算の小粋な良作”という、自分的には思わぬ拾い物をした感じ。
だからなのか、少し、公開前の配給さんが風呂敷を広げた感は否めないんですよね。
あの、クリストファー・ノーランやダニー・ボイルに匹敵する!みたいな煽りが、その…ちょっと。
そんなにまでか?そんな大絶賛か?という。
こういう実験的だったり挑戦的な映画って、巨万とあるじゃないですか。その中の一つというか。
あ、誤解を招くとアレなんですが、別にDISってる訳じゃないですよ?
「あー、楽しかった」のレベルだったというか。
あの、もう一度言いますけど、DISってはないですから。悪しからず。
「まぁがんばったんじゃないですか」くらい。
以下twitter(@skydog_gang)への投稿に加筆――
登場人物や撮影場所を限定して制作費を抑える、新人監督の常套手段的手法で作られたサスペンス。
わりと手堅くまとまっているもののヒロインが致命的にかわいくないため全く同情できない。
誘拐そのもののことかと思いきやラストで真の意味がわかる原題の妙は粋。
「映画は脚本と演出で決まる」の手本のような作品
冒頭、まったく台詞がないカットが続く。何の説明も無く、だが無駄がなく手際のいい準備が黙々と進められていく。この時点で、観客はただならぬ事件性を感じ、近代捜査の手を掻い潜るべく立てられた緻密な計画のなかにどっぷり浸かってしまっている。
「行こう」やっと発せられた一言から、3人のドラマが乱暴にスタートする。この映画の登場人物は3人だけだ。犯人が用意した密室を舞台に、誘拐犯と人質の女、2対1の攻防が第1ラウンドを迎える。
この映画の面白いところは、ラウンドが進むにつれ、2対1の力関係がころころ変わるところにある。
完全犯罪間違いなしの緻密な計画が、小さな嘘からほころびだす。嘘を隠すために嘘を上塗りし、ほころびはどんどん広がっていく。外界から閉ざされた狭い空間で猜疑心だけが膨らんでいく。嘘の物的証拠がたった1発の銃弾だけというのも面白い。「映画は脚本と演出で決まる」の手本のような作品だ。しかも両方を手掛けたJ・ブレイクソンは、これが長編初監督作品というから驚く。
さらに、3人だけのドラマを盛り上げた役者がいい。
エディ・マーサン演じる主犯格ヴィックは冷静な計画を立てる反面、相棒ダニーにはキレやすく荒いという矛盾した一面を持つ。そのダニーは、思慮が浅くヴィックに罵られると反抗もするのだが、けっきょく逆らえない。マーティン・コムストンのオドオドした表情が、自立できない男の弱さにぴったりで、作品のキーパーソンといえる役どころを好演する。ヴィックとダニー、このふたりの力関係の根源は、意外なカタチで露見する。ここも見どころだ。
そして最後はアリス・クリードことジェマ・アータートンだ。富豪のひとり娘にはまったく見えない。むしろ、“あばずれ”のようなしたたかさを持つ。しかも、綺麗なカットがひとつとしてない役だ。ボンド・ガールも努めた彼女が、この役を受けた勇気はハンパじゃない。
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