「浄化」未来を生きる君たちへ 火猫さんの映画レビュー(感想・評価)
浄化
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全体を見渡せば、至ってシンプルな構図となっています。
つまり前半は、誤解とわだかまり、暴力が積算されて、次第に熱が高まり混濁が極まり、未熟さゆえの爆発へ。
クリスチャンの悲鳴と、エリアスの母の慟哭が繋がり、この二人の対峙によって、本作の憎悪と緊張は頂点を迎えます。
後半は、和解と赦し、触れあいの除によって、深く静かで透明な、澄みきった世界を取り戻していきます。
『右の頬を打たれたら…』『汝、姦淫するなかれ』といった聖書から(?)の小節を連想させるシーンもありますが、
『罪と罰』あるいは贖罪あるいは赦し、そういった主題探しも、安易な処方箋を模索することも
本作を味わう助けとはならないでしょう。
自然光の中で、カメラが寄って捉える役者たちのわずかな仕種、首をかしげたり視線を変えるさまから滲みでる感情の移ろい。ほっと息をつくように挿入される穏やかな風景。
きめ細やかに紡ぎだされ織り成された、まるで生命さえ持ったかのような美しいフィルムに、ただ没頭するより他ないでしょう。
異なった世界をひとつに。
さらに、それらをこれほど異なった様相で提示してみせる手腕は、決して大袈裟手でなく当代一と言えるでしょう。
2011年、ベスト。
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