「静かに、淡々と。」セイジ 陸の魚 ゆなさんの映画レビュー(感想・評価)
静かに、淡々と。
好きな俳優である西島秀俊と森山未來がW主演。だからこの映画をみることにした。
原作も伊勢谷友介もよく知らないので、特に何か期待していたわけでもなく。
時系列が前後したり、異なる視点で同じ時間を撮ってみたり、静かに揺れるカーテンを撮ってみたり、と。「みやすい映画」では決してなかった。
だが、伊勢谷友介とは、「撮りたいもの」がしっかりある監督なんだな、と。そう感じた映画だ。
セイジは「他人よりも世界が見えすぎる」。そのためにうまく生きられない。
前半は、静かに、淡々と。セイジや彼を取り巻く人たちと、大学生の僕の出会いと交流が描かれる。
伊勢谷監督の撮りたいものが、至るところに散りばめられているという印象をうけた。
どこか非現実的な、ふわふわと宙を舞っているような。私にとって心地よい時間であった。
そしてある日事件は起きる。
西島秀俊、森山未來だけでなく、彼らを取り巻く役者たちもかなりの好演だった。
非現実的ともいえる時間でありながら、それぞれの人物はものすごく「リアル」だった。
特に、口数が極端に少なく表情もほとんど変わらないセイジを演じた西島秀俊は、さすがである。
「生きにくい」という感覚それ自体はまったく理解できなくはないが。やはり彼は非現実的な存在だ。
そのセイジに命を吹き込むような西島秀俊の演技は、とても印象に残った。
静かに、淡々と。しかし心に何かを残していく。きっと、またみたくなる。私にとってはそういう映画となった。
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