「キュートで素敵な映画だが色々惜しい……」イースターラビットのキャンディ工場 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
キュートで素敵な映画だが色々惜しい……
イースター(復活祭)は、イエス=キリストの復活を祝うキリスト教の行事。
なんでも欧米ではこの行事の際、復活の象徴であるイースター・エッグ
(彩色した卵や、お菓子を詰めた卵型の入れ物など)を、
イースター・ウサギなる謎の生命体が子ども達の家や庭に夜コッソリ隠し、
それを翌朝、子ども達が探すという遊びをするのだそうな。
サンタさんからのプレゼントとかハロウィーンとか、
子ども達にとってのそういう一大イベントみたいっす。
……と、わざわざ説明したのは、
今まで僕自身がイースターの習慣を全く知らなかったから。
(上の話も鑑賞後に調べた)
そしてそういう習慣を知らない方には、
この映画はあまりピンとくる物語じゃないと感じたから。
例えば『サンタはどうやって一晩で世界中にプレゼントを配るの?』
という物語はニッポンでも受け入れられるだろうが、
『イースター・ウサギはどうやってイースター・エッグを子ども達に届けるの?』
という物語じゃ、ピンと来ない子どもも多いのでは。
そもそも日本向きとは言い難い物語である上、色々と不満点も多い。
1.
実写の部分の笑いが幼稚……というか、過剰にコミカル。
全編CGアニメなら気にならなかったろうが、
生身の人間が演じてみせると……ううむ。
2.
特殊部隊“ピンクベレー”、悪辣ヒヨコ・カルロスとその部下フィル、ハッセルホフ氏など、
楽しくて魅力的なのに、描写不足なせいでイマイチはじけ切れないキャラが多数。
3.
展開が粗い。中盤以降が特に。
『夢か友情か』みたいな展開とか、イースター・エッグのパワーとかが
なんだか急に話に絡んでくる感じで、
そのままなんとなく大団円を迎えて終わってしまう。
だって、そもそも忙しい話だもの。
夢を追うウサギ、夢を探す青年、主人公2人の友情、父親達との葛藤、
逃走劇、クーデター、ファンタジックなアクションシーン。
なんだか色々な要素を盛り過ぎて、全部薄味になっちゃった感じ。
決して嫌いな映画じゃないんだけどね。
CGのレベルは高いし、
オープニングはワクワクさせてくれるし、
キャラや世界観はユニークでキュートだし、
ちょっと皮肉混じりのジョークも好き。
何よりこの映画には、
『途方も無い夢でも努力すれば夢は叶う』という優しいテーマがある。
まだまだ面白く成り得た映画に思えてなりません。
嗚呼、何だか無性に勿体無い。
<2011/8/20鑑賞>