劇場公開日 2007年3月3日

「光を動かすだけでも何かを表現できる」秒速5センチメートル(2007) 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 光を動かすだけでも何かを表現できる

2025年10月31日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

実写版を見る前に改めて見直してみようと思い再鑑賞。やっぱり新海誠監督の作品の中でもとりわけシャープな表現がなされた1作だと思う。風景に思いを託すというスタイルは、ここで一回完成を迎えていて、技術や予算のシンポでこの方向性はさらに発展していくわけだが、やはり大きなターニングポイントとなった作品だ。
最初の一話は冬景色、雪で止まった列車の中のそわそわするわびしい感じ、雪の降る速度がいい、焦っている主人公に対してゆっくり降る雪が感情と対比的になっていて。
二話目は特に好き。明け方の星空が宇宙と一体になっているようなあの空。2人で星空見ていて物理的には近い距離にいるのに、心は地上と宇宙くらいに、すごく離れている。ロケット打ち上げをとらえたワイドショットはいまだに新海作品で一番美しいショットではないかと思っている。
その他、電車内のシーンで、一切キャラクターの動きはなくて、手すりに反射する光だけが動いているショットも好き。光を動かすだけでも何かを表現できている。これは結構すごいことだと思う。

杉本穂高
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