「SF的設定を隠し味にとどめ登場人物達を優しく見つめるオムニバスドラマ」秒速5センチメートル(2007) よねさんの映画レビュー(感想・評価)
SF的設定を隠し味にとどめ登場人物達を優しく見つめるオムニバスドラマ
東京の小学校6年生タカキとアカリはともに病気がちだったことから親しくなったが進学を前にアカリは栃木に引っ越してしまう。その後も文通を交わしていた2人だったが今度はタカキが鹿児島に転校することになり、タカキは意を決して放課後アカリに会いに行く『桜花抄』。種子島の高校3年生のサーファー、カナエはスランプ中。同学年のタカキに淡い恋心を寄せていて、弓道部の練習帰りのタカキを校舎の陰を待つ毎日。いつも自分に優しいタカキだが彼はここではないどこかを見つめている。自分の進路も決められないカナエといつも通りに優しいタカキの背後にある夕暮れの空高く一筋の光が飛んで行く『コスモナウト』。そしてそんな小さな物語を運命の組紐で一つにまとめる『秒速5センチメートル』。
全2作と違ってSF的設定を隠し味程度にとどめて、胸の内で次第に大きくなる漠然とした想いとどう向き合っていいか判らない登場人物達を優しく見つめる物語を覆うどこまでも広い空。タカキとアカリの間を疾り抜ける東横線・・・ではなくて小田急線。『秒速5センチメートル』とタイトルが出た瞬間に大雪の中をゆっくり走り出す両毛線のように両頬を涙が伝いました。
コメントする