劇場公開日 2012年1月28日

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「心を洗うって白ペンキで塗り潰すこと?」しあわせのパン スネーク・オーガニックミントさんの映画レビュー(感想・評価)

1.0心を洗うって白ペンキで塗り潰すこと?

2021年10月13日
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鑑賞方法:VOD

怖い

寝られる

ざっくりとしたお話としては何かしら問題を抱えた客が、夫婦で経営するパン屋兼宿屋にやって来て、心を満たして帰っていく、みたいな話

北海道の雄大な大地
そこで育まれた素朴ながら滋味深い食材
そこに根ざした登場人物たちの飾らない美しさ
…みたいなのを期待していたのですが、なんじゃこりゃ?

まず、ここ北海道か?
ただだだっ広い草原と空が広がる僻地で道すら無い
北欧をモデルにしたファンタジー世界みたいに見える
実際店の窓から見える景色が雑なCG合成だし…
実際こういう場所が北海道にあることは事実だろうが、酷く狭く限られた空間のみが舞台になっているので、北海道である必要性を感じない
本作と同監督の「ぶどうのなみだ」、そして「空のレストラン」で大泉君主演の北海道三部作という括りらしいが、この監督、北海道の中でも作品作りに都合のいい部分だけ切り取って使うのは北海道が好きとは言えないのでは?

料理の方も全然美味しそうに見えないし、美味しくなるとも思えない
例えばポトフを作る時に香草を一束鍋に入れるのだが、沈まない様にゆっくりと浮かせる
あのさあ、宣材写真撮るために作ってんじゃないんだからさあ…
煮えたら食材を一種類ずつ鍋から出して、またゆっくりと切って皿に盛る
手際が悪いわ!せっかくの温かい料理が冷めるわ!
こんなペースでやってたら飲食店なんぞやってられない
あと、野菜を桶に貼った水で一個一個洗うというのも見栄えが良いからという理由で突っ込んだシーンでしょ?
だって水道ありますよね?宿屋やっててコーヒー、料理、風呂と水の使い道は多岐にわたるのに全て井戸水とかそういう設定なんでしょうか?

で、登場人物
癒される側のお客さん達はまあ良いとして、癒す側の夫婦と常連客達のキャラクターが気持ち悪い
言ってしまえば変人、ギリギリ健常者ばっか

例えばお店でコーヒー注文して、出てきた所でバスが来た!「じゃあコーヒー貰ってくわねー」でちゃんとした食器ごと持ってバスに向かう

例えば野菜売ってる夫婦の夫の方
両手にナスだかズッキーニだか持って掲げてるけど、いつ客が来るかも分からない道端の出店でずっとそのポーズキープしてたの?

お店屋さんなのに経済活動も見えない
その野菜はいくらなの?パンの値段は?
宿泊期間も決めずに気分で延泊したりチェックアウトしたりしてるけど、1泊いくらなの?
しまいには常連が次々と店にやって来て宿泊客の老夫婦を中心に踊り出す始末…クスリでもやってんのか?
人間としての生体活動を放棄した感じで、血の通った人間じゃなくシナリオの都合で動くロボットみたい

心が洗われると言うより、本来誰もが持っている人間の心の粗を白いペンキで塗り重ねて隠した感じの作品

スネーク・オーガニックミント