「文革で会った二人」サンザシの樹の下で ku-chanさんの映画レビュー(感想・評価)
文革で会った二人
古井戸(1987年製作の映画)で初めてチャン・イーモウZhang Yimouという人を知った。私は大学卒業後すぐ、中国の文化、特に歴史や文学に憧れた。最後、溥儀が平民になって、長く続いた皇帝というものがなくなったことが好きだし、中国の文化大革命も誇らしく思えた時期があった。第2時大戦後、毛沢東を中心として、封建、資本主義ではない社会主義の文化を作った時代に(1966年から1976年)賛否両論はあるのが承知で言うが、女性の台頭、男女ともに地方で労働をすることが社会貢献の意識を高めることだと思って、憧れた。
そして、中国映画を専門に放映する古びた小さい映画館で観た最初の中国映画が『古井戸』だった。最近コロナ感染で自粛の時期にチャン・イーモウZhang Yimouの作品をネットで無料で観出した。それが、『サンザシの樹の下で』。なんと悲しい純愛映画で、ジン(チョウ・ドンユィ)は一生サン(ショーン・ドウー:カナダ人で北京で演劇の勉強を)のことを忘れられないだろうなとおもわせるようなえいがだ。サンザシの木のあった地域が三峡ダムという水力発電のダム建設のためこのサンザシの木はサンと一緒に水の中に沈んでしまったが、水の中でも白い花をさかせているそうだ。
この二人の恋愛についてはみなさんが同じことを感じているので書かないが、この文化大革命がこの二人を結びつけた。文化大革命によっておこる、右翼(ここではこの言葉を使っている)弾圧が、家族の仕事を奪ったり、村八分のように静かに控えめに生きていかなければならない悲しい人生を歩ませている。父親が右翼で囚われの身でなければ、もっと大胆に、例えば、手を握って歩くことさえできたのに。また、文化大革命の大躍進政策によって、産業、農業など力に力を入れていたから スンの働いている地質調査隊の場所が危険な薬品かなにかを扱っていたのかもしれない。それも、ジンのために残業を繰り返していたから。それに、文革で父親が犠牲になったからこそ、母親が人一倍力をジンに注ぎ、ジンは先生という仕事を獲得できたかもしれない。何も答えはないが、文革は否定的な面だけではないとこの映画からもわかる。