劇場公開日 2011年12月21日

ワイルド7 : インタビュー

2011年12月20日更新
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羽住英一郎監督、「ワイルド7」シリーズ化への意欲

漫画家・望月三起也の代表作である「ワイルド7」が、出版から40年余を経て実写映画化された。凶悪犯を抹殺する目的で結成された7人の元犯罪者による超法規的集団の活躍を描くアクション大作で、メガホンをとったのは「海猿」シリーズで知られる羽住英一郎監督。街を封鎖しての大掛かりなバイク・スタントや弾丸乱れ飛ぶド派手な銃撃戦など、これまでの日本映画にはなかったアクションに挑み、試行錯誤を繰り返した成果は、まさにスクリーンサイズにふさわしい圧巻の迫力だ。「こういうジャンルの作品がいっぱい作れると面白い」。その言葉からは、アクションの新機軸を切り開いた自負が感じられた。(取材・文/鈴木元、写真/堀弥生)

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♪ワイルド7、ワイルドライダー、やって来た来たつむじ風…1972~73年に日本テレビで放送された連続ドラマ「ワイルド7」のエンディングテーマのフレーズが、今も耳に残っている。原作は69~79年に「週刊少年キング」で長期連載された往年の名作で、羽住監督の子ども時代と重なる。

「漫画が置いてある喫茶店などに親に連れて行かれたときに、自分が読めるのは『サザエさん』や『いじわるばあさん』。『ワイルド7』もけっこう置いてありましたが、絵のタッチなどは大人が読む感じで、子どもとしては読んではいけないイメージがありました」

映画化が決まり、監督をすると決まった際にあらためて原作を精読。脚本執筆にあたっては、設定を犯罪が多様化した現代に置き換えることを前提に、あらゆるパターンを考えたという。最も留意したのは“ヌケ”のいい映画にすることだ。

「そもそも犯罪者の集まりで、いくら悪人相手とはいえやっていることは人殺し。それでお客さんを気持ち良くさせ、見終わり感を良くするのはすごく難しいと思い、非常に悩みました。一番の問題は、主人公が能動的ではないこと。悪を倒さなければという正義感でもないし、死刑になるから嫌々やっているわけでもない。存在する理由が漫画では欠落している気がしたんです」

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日本映画の父と呼ばれる牧野省三が標ぼうした「一スジ、二ヌケ、三ドウサ」にあるように、ヌケは映画製作における重要な要素。改稿を重ね、たどり着いたのは指揮官の草波勝の持つある思惑の下に召集されたとする設定で、ワイルド7の中核を担う主人公の飛葉大陸役には当初から瑛太を想定していた。「銀色のシーズン」(2007)以来、2度目のコンビとなる。

「彼は真っ白なんです。作品ごとにその役に染まるので、『銀色のシーズン』のときも城山銀という役でしかなかった。本当にまっさらな状態から役をつくっていく感じは、俳優として魅力的です。今回は主人公が犯罪者であり、悪党退治といっても人殺しをしている難しい役どころ。アクションをうまく見せつつ、いかに人間ドラマとして成立させるかというあたりはお互いに話しました」

ワイルド7のメンバーは、他に椎名桔平、関ジャニ∞の丸山隆平、阿部力、宇梶剛士ら個性的な顔ぶれが並ぶ。それだけに7人がそろったときのバランスなど、キャスティングには細心の注意を払いつつこだわりも見せる。

「全体のパッケージ感として、あまりうさん臭くなりすぎないように。ある種のスマートさは必要だと感じ、イリーガルなテイストにしたいなと思いました。本当にどうしようもないヤツらにしてしまうと、嫌われてしまうので、ワルとはいいつつ、そんなに悪くもなかったりするくらいの塩梅(あんばい)ですね」

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インタビュー2 ~羽住英一郎監督、「ワイルド7」シリーズ化への意欲(2/2)
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