「堪能しました!」ドラゴン・タトゥーの女 misha biakuityさんの映画レビュー(感想・評価)
堪能しました!
"ハイリー・スタイリッシュ"という言葉はこういう作品のためにあるのだろう。
複雑に入り組んだストーリーライン、重厚なキャスト陣、語りすぎない脚本、凍てつくスウェーデンの空気に呼応するようにクールでありながら、どこか官能的なトレント・レズナーの音楽、全体的に抑えられた色調と、その中に輝くルーニー・マーラの白い肌。視覚的にも聴覚的にも楽しめた。
物語の展開はスピーディーで、クライマックスに向かう緊張感も素晴らしい。2時間半があっという間だった。
半端でない暴力とセックス、大富豪と家族たちの愛憎はまさに現代のギリシャ悲劇だ。甘ったるい感情を突き放すような演出、ストイックで格調の高ささえ感じさせる雰囲気が包み込む。
ルーニー・マーラは、ITを使いこなしバイクにまたがりバイセクシャルという新しいヒロインを現出してみせた。トリニティや草薙素子に通じるアクション・ヒロインの系譜とも言えるが、彼女のか細い肉体からは悲しみと絶望と爆発せんばかりのエネルギーを皮膚の下に押さえ込んでいるのが透けて見えそうだ。
この映画の中ではメイン(ヴァンゲル一族の謎を追うミカエルの物語)とサブ(リスベットの物語)のストーリーが重層的に進行していくが、マルティンが最後に放った「危険だと思うのに、なぜ人はわざわざ罠にはまりに来るのか」というセリフは、そのままリスベットの行動にも当てはまる。天才的な能力を持ちながらも一方で無防備で、簡単に大人の罠にはまってしまう。
氷のように心を閉ざしても不変の純真さが見え隠れする彼女は魅力的で、ミカエルに対してわずかずつ柔軟になっていく表情がとてもいい。
孤独な魂たちに救済を与え、安堵とほろ苦さを残しながら映画は終わる。
昨年の「ゴースト・ライター」も素晴らしかったが、こういった映画を大画面で見ると、やはり1800円を払っても劇場に足を運ぶ価値があると思えてしまう。
ちなみに試写会場の有楽町日劇は大劇場のため画面が暗いという印象があり、しばらく足が遠のいていたが、最新のデジタル設備導入により驚くほど明るく鮮明な画質と音で鑑賞する事ができた。
この作品の硬質な触感が4Kデジタル画面を通じて、より観客に伝わる事をフィンチャーは多分に意識しているのだろう。
新しい映画の可能性を感じさせる作品。
倫理的に問題のある箇所は何もないと感じたが、、、<R15>修正中ということで、公開版をまた見に行こうと思う。