ドラゴン・タトゥーの女 : 映画評論・批評
2012年1月31日更新
2012年2月10日よりTOHOシネマズ日劇ほかにてロードショー
暗鬱かつ健気なヒロイン、リスベットがカッコイイ
見返さないとどういった形態が連続しうごめいているのか語り尽くせないが、タイトル・デザインのCGアートがとてつもなく魅力的だ。女体と交接とスカルが黒のメカニズム、黒い流体のエロスとして炸裂する。思うにこれはスウェーデンが唐突に生み出した暗鬱かつ健気な世界的ヒロイン=リスベット・サランデルの肉体と心理の黒々としたビジュアル化だろうか? ここだけはトレント・レズナー+デビッド・フィンチャーのミュージック・ビデオの新作が紛れ込んだような意外性と恍惚がある。そう、恍惚だ。
小柄で活発な知力の持ち主、しかし、無残ともいえる過去と現在を神経を露出させて痛々しく生きるリスベットは今まであまりなかったヒロイン像だ。富豪の屋敷から40年前に消えた少女というミステリーの仕立て方に、特に新味があるわけではない。この謎をジャーナリスト=ダニエル・クレイグとともに解いていく彼女の魅力がすべて。ルーニー・マーラは惜しげもなく裸体を晒す。白い肉体がきびきびと動き、その動きがドライなため、強制的で屈辱的な受け身のセックスもいやらしさがない。いやらしいのは弱みにつけ込む身元保証人の肥満野郎だ。彼の肥満は「セブン」の<食欲>野郎を思い出させ、フィンチャーが自らの血のフィールドを確認したことを観客に知らせる。こいつへのリスベットの逆襲がカッコイイ。リスベットの台詞でこれまたカッコイイのが「殺してもいい?」だ。どのシチュエーションで彼女がこの台詞を吐くかはお楽しみ。
(滝本誠)