「覚悟してご覧ください。」ウィンターズ・ボーン とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
覚悟してご覧ください。
人生を甘えて生きている自分に気づかされて、軽く頭を木刀?で殴られた気分。
涙さえ拒否する過酷な環境。
泣き言を言いたいのに、それをわかってくれる親友がいるから?、弟と妹を見捨てられないから? それでも、だから生きていく。
そんなリ―にいつの間にか、釘づけになってしまう。
状況は全く違うけど『誰もしらない』を思い出してしまった。
でも、リーの方が、人生を切り開く道をとったかも。
年齢が違うし、リ―には途中までとは言え、慈しみ育んで守ってくれた両親がいたからなのか。
犯罪に手を染めなきゃいいのに。家がなくなったって生活保護があるじゃないかと、
いろいろな方のレビューを読むまでは思っていた。
なんという厳しい現実…。
日本の常識を当てはめたら理解できない現実・物語。
やせた土地、軍隊にはいる以外に稼ぐ方法が無い土地。
バイトもできない、ましてや就職も?
木を売るってつまり財産を切り崩すってこと?
持続的再生可能な方法が思いつかない土地。
そんな中で家族を守るために奔走するリーが格好良くも切ない。
本当の勇気をもった人だと思う。生半可なヒーロー物がしらけてしまうほどに。
村の掟に組み込まれていなかった、みそっかす扱いだったリー。
でも、今回のリーの行動で、これからは一人前として扱われるのだろう。
日本では、一人前になっている大人と子供の差はあいまいで、かえって子供でいる方が珍重されてかつ責任を問われないと言う、大人にならないほうが得的な部分がある。
けれど
ヨーロッパの流れをくむ世界では、一人前と一人前でない人の差は歴然としている。場合によっては食事するテーブルを分けられてしまうほど。
今後、リーが犯罪に手を染める道を選ぶのか、
それ以外の道を選ぶのか、
映画は語らないけど、
家族を守りきったという自尊心がリーを輝やかせてみせる。
観る人を選ぶ映画ですが、リーの生きざまを見ていただきたいです。
★ ★ ★
最近いろいろなところで耳にする”ヤングケアラー”。”絶対的貧困の中で活きる子ども達”
リーの生き様は、まさしく””ヤングケアラー”。”絶対的貧困の中で活きる子ども達”
そんな彼女に、どんなサポートを差し出せるのか。
『誰も知らない』でもそうだったが、兄弟をバラバラに分けて「施設に収容すれば良い」と言うものではない。
「家族を守る」というリーの自尊心を大切にしつつ、大人にできることは何なのか。
”施し”をしそうになる時、見直す映画です。