「じわじわ伝わってくるメッセージ」恋の罪 Chisaさんの映画レビュー(感想・評価)
じわじわ伝わってくるメッセージ
園子温と神楽坂恵が夫婦だったということをつい先日知った私です。
だから園子温の作品に毎回出てくるのか。
だって言いづらいけどさ...なんていうか、大根...だよね...??
「自分の妻をどんな使い方してんねん!」っていう、100人中150人が言いそうなセリフを呟きながら観ました。
【メインの登場人物】
◆吉田和子(水野美紀):刑事。夫と娘がいる幸せな家庭。ドSな男と不倫中(相手は出てこない)。夫の後輩とも不倫経験ありという奔放さ。円山町で起きた猟奇殺人事件を捜査する。
◆尾沢美津子(冨樫真):昼は有名大学の助教授、夜は立ちんぼやデリヘル嬢という二つの顔を持つ謎の熟女。昼と夜で人格まで豹変する。
◆菊地いずみ(神楽坂恵):売れっ子小説家と結婚して表向きは玉の輿だが、夫にも私生活にも満たされない思いを抱いている主婦。ある日、夫に隠れてAV出演してしまう。その後尾沢と出会い、尊敬、共感、崇拝する彼女と一緒に立ちんぼやデリヘル嬢をするまでに堕ちていく。
円山町の廃墟で女性の変死体が発見された、という同僚からの電話を受けたとき、吉田はラブホテルで不倫相手と情事の真っ最中だった。
慌てて現場へ向かうと、そこには2体のマネキンが。
よく見ると、マネキンの数カ所に腐乱した女性の身体の一部が埋め込まれていた。
蛆虫がそこらへんにうじうじ。鑑識によると死後十日ほど経過しているという。
そして、部屋の壁には大きな「城」の文字。
この廃墟はなんなのか?
被害者の身元は?
城とは何か?
犯人は?
出てくる三人の女たちは、みんな自分の人生に満足できず煮え切らない思いを抱えているわけだけれど、側から見たら完璧なまでに恵まれて幸福であろう人生を送っている、というのが象徴的。
女ってほんと無い物ねだりしてやまない生き物よね!
無い物をねだってそれを手に入れるためには相当の犠牲を払わなきゃいけないし、犠牲を払ってまで手に入れたとしてもそのときにはもう自分がズタズタになっている、っていう世の常を秀逸に描ききっているなと思った。
ほんと園子温の作品は、容赦なくザクザク切り込んでくるよね。
だから観終わると漏れなくちょっとオエッてなるんだ。
「地獄でなぜ悪い」「冷たい熱帯魚」のようなスプラッター的グロ描写は影を潜めた一方で、あまりにも生々しい「生」と「性」を余すところなく描ききったという点でまた違ったグロさがあった。
でもどっちにしても好き。容赦のなさが圧倒的。鑑賞後すぐにはわからないこの魅力。
水野美紀、この作品まではほとんど映画とか出てなかったんだなぁ。
圧倒的な滑舌の悪さを凌駕するほどの美しさなので、好きです。
初っ端からフルヌードで随分体当たりだなぁ~と思ったけど、中盤以降は特に過激なシーンもなく普通だった。
鑑賞後しばらく時間が経った今でこそ「容赦のなさが圧倒的!」とか賛美してるけど、実は、園子温の作品としては珍しく途中で止めようかなって少しだけ思った。
前半の間延び感、濡場の多過ぎ感、登場人物の饒舌感、神楽坂恵の大根感、そして水野美紀側のストーリーの、影の薄さ。
しかもとにかく長い、いや、長いのはいつものことだけどこれはやや嫌んなっちゃうくらいの長さ。
重要な「城」というキーワードの使い方もイマイチ釈然としない。
最初にドーンと出てきて以来ほとんどヒントらしいヒントもないまま終盤に突入し、一番最後にミツコ母の語り&回想で全部を説明するという、後出しジャンケン的な種明かし。
せっかく長い映画なんだから、たくさん伏線を張って徐々に謎が解明されていくストーリーだったら、もっともっと楽しめたかなぁ。
次は「愛のむきだし」だ!!
・・・と思ったけど、あれ4時間くらいあるんだよね。
なんか短くて濡れ場がなくて軽いやつでいったん休憩してからにしよ。