「3Dには不向きな痛々しい冒険のリアリティ」サンクタム 全竜さんの映画レビュー(感想・評価)
3Dには不向きな痛々しい冒険のリアリティ
かつて、この劇場で感動した『アバター』の監督ジェームズ・キャメロンが製作を手掛けた3D最新作で、引退するオリオン座のオオトリには相応しいかなって期待して観たのだが…。
お世辞にもあんまし良い出来じゃなかった。
そもそも3Dには全く向いちゃいないネタやったと思う。
海より遥かに深い場所の底にて、メンバーの行く手を遮り、容赦なく呑み込んでいく水の脅威を全面に打ち出した展開は『タイタニック』以前の名作『アビス』に近いニュアンスを感じた。
っていうか、確実に『アビス』の方が面白い。
それは、命を脅かす災害に対するファンタジー性の有無だったと思う。
冒頭で
《実話を基にしています》
と記された時点で、
「ロクな終わり方しないな」って、ヤな予感が渡来したが、その通りの流れと化した。
ピンチを乗り越えるのではなく、諦めて進むリアルな逃避は、痛々しさを増大させ、娯楽性を優先する3Dには重過ぎて、機能を全く活かしていない。
重く暗い洞窟から脱出する話なのだが、見終わると、後味の悪さに、客の気持ちの方が重く暗く沈んでしまったのは言うまでもない…。
では最後に短歌を一首
『闇呑まれ 飛沫の迷宮 潜る影 よじ登る泡 愛を沈めて』
by全竜
さらば、七間町シネマ通りよ、
そして、今まで幸せな一時をありがとう。
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