「パニック映画であることを忘れる美しさ」サンクタム マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
パニック映画であることを忘れる美しさ
誰が最後まで生き残るのか、この作品、パニック映画ではあるのだが、地底湖の美しさについ見とれてしまう。3Dによる、鍾乳洞や青く澄み切った水のなかを抜けるトンネルの映像は、ネーチャー系の作品を観ているようだ。
躰ひとつがやっと通るようなトンネルを抜けると目の前に広がる水中洞窟、そして地底湖。自然の美しさに感嘆すると同時に、果てしない脅威をも感じる。まさにそこは〈聖域〉と呼ぶに相応しい。
冒頭、ヘリで上空から見下ろす森のロケーションも美しく、突然ぽっかり口を開ける“エサーラの洞窟”は圧巻だ。
ドラマは、巨大なサイクロンによる鉄砲水に襲われ、退路を断たれた6人が、まだ発見されていないトンネルに一縷の望みを懸けて、イチかバチかの前進を決意する。
ひとりまたひとりと脱落していくなか、チーム・リーダーのフランクと息子ジョシュの親子関係がドラマの中心になる。
探検のためなら一切の犠牲をもいとわない父親を冷徹だと非難するジョシュ。沈着冷静な行動で、わずかな判断ミスが命取りになることを身に沁みて知っている父親フランク。
一流の探検家だが、親子関係を築くことに不器用なフランクは、ジョシュになかなか自分が蓄えた知識と経験を上手く伝えられない。息子のジョシュもまた父の偉大な側面を素直に受け入れられない不器用さを持つ。
社会で生きることに不器用な彼らは、誰も足を踏み入れたことのない場所に、自らの名を刻み込む。彼らにとって生きた証のように・・・。
ほとんどリアルタイムで進む地底洞窟からの脱出劇。親子関係は修復するのか? いったい誰々が助かるのか? 未知のトンネルはどこに続いているのか? きっと、ポップコーンを食べるのも忘れて見入ることだろう。
p.s.1 「アバター」のジェームズ・キャメロンの作品として売り込みたかったようだが、今作での彼は製作総指揮で、監督は今作が長編2作目のアリスター・グリアソンだ。日本での公開は今作が初。なかなか上手い監督だ。
p.s.2 今作の公開日は、当初4月22日の予定だった。