「エイリアン抜きでも西部劇として成立するようなドラマ。ラストシーンは、『シェーン』のラストを垣間見るようだ。」カウボーイ&エイリアン 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
エイリアン抜きでも西部劇として成立するようなドラマ。ラストシーンは、『シェーン』のラストを垣間見るようだ。
エイリアンは登場するもの、これは本格的な西部劇でした。作品のルックをクラシックな西部劇映画に指示したのはスピルバーグだそうです。監督や脚本家に『駅馬車』、『荒野の決闘』、『砂塵』などを見せて、作品の方向性を示したようなのです。
それを受けてなのか寡黙なダニエル・クレイグと頑固でひねくれたハリソン・フォードとのやりとりは、それぞれキャラが立っていて、ゾクゾクするくらい、それぞれの男たちの生き様が伝わってきます。なのでたとえエイリアン抜きでも西部劇として成立するようなドラマでした。ちなみに監督はフォードにジョン・ウェインをイメージしたそうです。 ダニエル・クレイグが黙って立ち去るラストシーンは、『シェーン』のラストを垣間見るようで、いなせな後ろ姿が格好良かったです。
作品のテーマは、侵略型のエイリアンという19世紀の西部開拓時代には考えられない強敵に立ち向かうためには、敵対しあう地球人同士は連帯しなければならないということでした。
舞台となる西部の町には様々ないさかいが渦巻いていました。元軍人のダラーハイドの武力にものを言わせた支配とそれに反発する町人たち。そして町外れには馬車や通行人を狙う強盗団やダラーハイドが闘ってきた原住民たちがひしめいていたのです。
こんな連中が一致団結することができるのかという前振りがミソですね。それは、民族間や宗教対立を深めている現代の地球人類にも、同様の問いかけに繋がっていて、地球の危機に果たして人類は連帯できるのかと深く考えさせらる作品となりました。
そんな町にある日、記憶を失った一人の男が迷い込みます。なぜか男の腕には奇妙な腕輪をはめられているのでした。
男は、記憶を失っているため一切の事情が語られません。ミステリアスな幕開けは、きっとドラマに引き込まれることでしょう。
しかし、男はこの町に訳ありだったのです。なんとダラーハイドの金貨を強奪した強盗団の首領でした。しかもその奪った金をネコババして、トンズラしようとしていたのでした。
街に現れた男は、早速保安官に捕まって投獄されてしまいます。男の名前はジェイク・ロネガン。ジェイクを確保しようとダラーハイドの一味が、街を襲います。絶体絶命のピンチに陥ったとき、その事件は起こりました。
ここまでは完璧な西部劇だったのが、突如として上空に現れたUFOの出現によってSF大作にガラリと変貌します。
予告編で散々見せられたけれど、エイリアンによる町の襲撃シーンは大迫力です。それをロネガンにはめられた腕輪が、光線を放って打ち落とすところは、なかなか豪快で見応えがありました。
エイリアンは襲撃と同時に、多くの町の人をさらっていったのです。ロネガンが打ち落としたエイリアンが逃亡した足跡を頼りに、彼らのアジトを見つけてさらわれた人たちを奪還することになりました。
エイリアンについて全く知識を持たない彼らに、ひとりだけ事情通のエラがいました。なぜ彼女だけエイリアンに詳しいのか。あっと驚く彼女の秘密が中盤に明かされます。
エイリアン探索と言っても、当初はバラバラでした。ロネガンはオレには関係ねぇと無視を決め込むし、ダラーハイドはロネガンを金貨のことで許したわけではありませんでした。
途中でくわす強盗団にも、俺たちの裏切り者とロネガンは付け狙われます。立場は変わって、原住民と遭遇したとき、ダラーハイドが捕まって復讐されそうに陥ります。なかでもシビアなのは、エイリアンの襲撃をまともに受けて、ダラーハイドの部下が尽く逃亡してしまうのです。将としての徳のなさを痛感するのでした。それに比べてロネガンは、自分を恨みに思う部下たちのところへ飛び込み、エイリアンとここで闘わなければ、皆殺しにされてしまうと説得。全員を味方に口説き落としてしまうところが対照的でした。
反目しあう面々に巧みに協力しあう必要性を感じさせるエピソードを交えて、やがて大同団結してエイリアンに立ち向かうプロセスはなかなか説得力がありました。なかでも不徳を悟ったダラーハイドが、ロネガンに協力していく心境の変化が見物です。
大詰めのエイリアンとの対決は、これも西部劇そのものです。まともにやり合ったら敵う相手ではありません。しかし巧みに基地からおびき出しての肉弾戦に持ち込むと、彼らにも勝機が出てきました。当初バラバラだったロネガンたちが、一致団結してエイリアンと闘うシーンは見応え充分です。
科学力で段違いの相手の母船を破壊し、誘拐されていた人たちを救出するのか。一見あり得ないような困難な状況設定を巧みに乗り越えていったロネガンたちの活躍の顛末をぜひ劇場で見届けてください。