「独ソ戦でナチス軍に、ただただ一方的にやられてしまう戦鬪シーンがリアリティ満載」戦火のナージャ Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
独ソ戦でナチス軍に、ただただ一方的にやられてしまう戦鬪シーンがリアリティ満載
独軍から逃走中の多数の住民もろとも橋を爆破するソ連軍。多数の村住民を小屋に閉じ込めて火を放つナチス独軍。攻撃を受けたことから赤十字船乗船者を子供含めて皆殺しを敢行する独飛行機。見事に戦争の惨さ残虐さを描き出している。
そして、新卒エリート兵士を含めてドイツ兵を待ち受ける主人公ら歩兵240名、ドイツ戦車軍団相手になすすべもなく、ただただ一方的にやられてしまう戦鬪シーンがリアリティ満載。確かに、独ソ戦のソ連兵死亡者数は1470万人とのことなのだから。果敢な奮闘虚しくという戦争映画は沢山見てきたが、何も抵抗できずに、これだけ自国兵が一方的にやられる戦争映画を見るのは初体験で、その描写には新鮮な感銘を受けた。
ヒロインのナージャは攻撃受けた舟から海に投げ出された海洋で、神父から洗礼を受けた。それ以降、彼女の胸元には十字架が。神の意志を語る彼女に、ソ連時代で宗教はタブーのはずであるが、ドストエフスキー等ロシア文学以来の歴史的なロシア人の宗教性を感じた。画面に映る蝶々は天使なのだろうか?
スターリンに命じられ主人公を探すオレグ・メンシコフ演ずるKGB大佐の存在が謎。ピアノも弾きこなすいかにも貴族階級だが、スターリンに忠実ではない様。しかし、主人公妻や娘との過剰な関わりは不思議。第一作を見れば分かるのであろうか?
監督・製作・脚本・主演ニキータ・ミハルコフによる2010年公開にロシア映画。
脚本は他にアレクサンドル・ノボトツキー=ウラソフ、ラジーミル・モイセーエンコ、グレフ・パンフィーロフ、撮影はウラジスラフ・オペリアンツ、美術はウラジーミル・アロニン、音楽はエドアルド・アルテミエフ。
他出演はナージャ・ミハルコフ、オレグ・メンシコフ、セルゲイ・マコヴェツキー、エヴゲーニイ・ミローノフ、ドミートリ・ジュゼフ 、ヴィクトリア・トルストガノフ(妻マーシャ)、アンドレイ・メルズリキン(生き残る仲間の兵士)、アルトウル・スモリアニノフ(ドア背中に背負い生き残る兵士)。