「すずめの戸締まりを理解する上で重要な作品」星を追う子ども 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
すずめの戸締まりを理解する上で重要な作品
新海誠監督の過去作で『すずめの戸締まり』の物語構造に一番近いのは、この作品ではないかと思う。少女が主人公であること、イケメンに出会った旅に出ること、地下世界で死者に会おうとする話であること、「いってきます」というセリフや常世っぽい世界の存在などなど、共通点はたくさんある。世間的には新海誠の作品らしくないと言われるこの作品は、確かに絵柄を変えてみたり試行錯誤でもがきながら作ったものだと思うが、後の新海誠の作品で重要なモチーフ、神話の引用など、が割と登場するので、重要な作品でもある。
ここで重要なのは「死者」という存在をどう認識するかということで、死者は生きている者とどこかで共にあるのだという感覚だ。『すずめの戸締まり』が東日本大震災を題材にしていることから、死者と生者がどう共存するのかを描く必然があったが、その以前からこのテーマに新海監督は挑んでいたのだ。いろいろと注目するポイントを変えてみると、本作も決してただの失敗作ではないことに気が付く。
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