「迷える、人事担当者へ」YOYOCHU SEXと代々木忠の世界 ダックス奮闘{ふんとう}さんの映画レビュー(感想・評価)
迷える、人事担当者へ
石岡正人監督が描く、AV界における孤高の革命児、ヨヨチュウこと代々木忠の波乱の半生を見つめるドキュメンタリー映画。
来年春の新人研修に使う教材選びに、今から頭を悩ませていらっしゃる企業の人事担当者様、朗報です。ここに、理想のコミュニケーションを伝え、常に貪欲に創意工夫へと挑み続ける人間の尊さを語り、果ては男女の確かな恋愛論まで教えてしまう作品を発見いたしました。それが、本作なのです。
ピンク映画という名前で発信しているアダルト作品。その発展と進化の過程にあって、必ずといって良いほど名前の挙がる名物監督、代々木忠がどのようなスタンスで映画を撮り、人生を豊かに拓いてきたか。
本作は豊富な映像素材と、撮ってきた作品群、そして代々木自身が巻き込まれてきた時代の変化、事件の詳細資料を繋ぎ、誰が見ても代々木忠という人間のもつ魅力、可能性、その深い観察力を実感できるように作られている。ドキュメンタリーとして、良質な完成品として評価すべきものになっているといえるだろう。
もちろん、テーマはアダルト映画であり、AVという特異な分野となっているために、万人に勧めることは出来ない。しかし、少し視点を変えて本作を考えてみれば、男女の間にある良質なコミュニケーションの秘訣は、そのまま全ての他人との関わり合いに応用できる普遍性を持っている。桃色ビジュアルに目をくらまされて観賞を拒絶するには、もったいない。
本作には「開放」と「共鳴」というキーワードが随所に現れる。会社で、学校で、異性間で心も、身体もきちんと相手に開くことから始まる理解と、同感(もちろん、会社であまりに開放が過ぎると警察沙汰になるので注意が必要だが)。代々木が監督作品を通じて伝えてきたのは、時代の流行を使った悩める人間の救済と、励ましだったことは、色眼鏡でアダルト映画を見てきた観客には新鮮に、かつ面白く見えてくるのは間違いない。
人事担当者の皆様。背中で後輩への励ましを伝える格好良い上司の姿、そして的確に相手の心と向き合う方法、姿勢。これが、今の貴方の会社には必要ではないですか。ならば、ぜひとも本作を、ご活用くださいませ。ただ、別の観点で研修が問題になっても、私は責任をとりませんので悪しからず。