僕達急行 A列車で行こうのレビュー・感想・評価
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森田映画の終t着駅、乗り遅れた方は是非ご覧下さいね!
早いもので森田監督が亡くなられてから間もなく1年を迎えようとしている。映画好きの私にとって森田監督の作品は、学生時代の思い出とは常に一体で、まるで親友のように、自分の隣に生きて私の生活を見守ってくれていた。
『のようなもの』81年に始まり『家族ゲーム』『メインテーマ』『それから』そして大好きな作品だった『未来の想い出』『ハル』も忘れられない作品だ。
80年代から、今後の邦画界を担って行く才能溢れる有望な若手監督達として称賛される監督の中に、いつも彼の存在が有り、その中でも森田監督は常に中心的存在として、特別輝いていた!
その魅力と言えばブラックコメディーからシリアスものや、アイドル映画をも含め、その才は特定のジャンルに囚われる事無く、オールマイティーで、常にその時代の匂いを映像に封じ込める天才的才能が有ったと私は思うのだ。
森田作品が好きな私は彼の映画がどう評価されるのか、『黒い家』はアメリカの映画祭にまで行って観たものだ。
時代の匂いを巧みに映像として画面に撮り込んで行く事が出来るその秘密は、きっと脚本と監督を常に一手に、1人でこなしていたからこそ、彼の映像には独特のセンスが光輝いていたのだろう!それはまるで、日本のW・アレンの様に個性的で、ハマる人には最高の監督だ。
常にそれぞれの時代の空気を映像として遺してくれた森田監督は、近代文化の語り部的存在だ。
『僕達急行A列車で行こう』この映画も一般的には、鉄男と鉄子などと呼ばれる、鉄道オタクとして風変わりな存在としてしか世間からは見られない様な人々を、実はこんなに趣味に生きる人達の生活は豊かで素晴らしい世界を持っている事を教えてくれていたのだ。
そして人の人生での出会い、ご縁と言う不思議な、人と人との繋がりの素晴らしさと大切さとを笑いの中で、実にホノボノと描き出してくれる。
今日では、総てが八方塞がり的な閉塞感の中で希望も無く、生きる人が多い日常の中で、今の生き方を、まるで列車を乗り換える様に、少しばかり生き方の方向や、速度を変えてみるだけで、人生と言う旅の質や方向は180度も変化すると監督が言っているようだ。
そして車窓の風景が変化する様に、人生で体験する質も感じ方も、見違えるように変化する、人生に対する気持ちや感じ方までも変化させる事が出来るその秘訣をそっと遺言の様に打ち明けてくれているのかも知れない。ひょっとすると、本作は森田監督が亡くなる前にあの世を垣間見て、私達に伝え残してくれた監督からの「未来の想い出」なのかもしれない!実に瑛太を始め、松山ケンイチも松坂慶子も楽しそうに、活き活きと演じている!
これ程ほのぼのと生きる素晴らしさと、希望を胸に抱き、日々自分の生き方を愛する事を、その素晴らしさを描いたヒーリング映画は他に無い!そして、もう森田監督の新作が観られない事は残念でならない。天国での、森田監督の永遠のご冥福を祈って止まない!森田監督ありがとうございました!やっと涙せずに笑って遺作を楽しく観られました。
懐かしい日本映画の香り、いい映画でした
生き生きしてて、ほのぼのしてて。懐かしい日本映画の香りの、いい映画でした。
素直に笑えて、ちょっとだけいい人になれた気分で劇場を後にしました。
オタク讃歌、細い所まで作り込まれていて心地良かったです。笹野高史と瑛太演じる小玉親子、同じ表情で笑って本当に親子っぽいの、嬉しくなっちゃいました。
女性陣もそれぞれにホント楽しませてくれました。村川絵梨演じる社長秘書のミドリさん、とっても可愛かったです。
新幹線も伸びたし、九州は絶好の舞台、楽しい気持ちで覗いているので、どの車窓も楽しげです。
監督作品「(ハル)(1996)」では、北へ向う車窓の切なさが強く印象に残っています。このたびは構図はちょっと似てるけど、笑えました。
映画館になかなか出向けず、お茶の間上映を楽しみにしている映画ファンの大先輩達にも、早く地上波放映で楽しんでもらいたいです。アヤメさんのお母さん、年代限定のツボですよね。
趣味の無い人生なんて!
今年の劇場30本目は森田監督の遺作で弊社出資作。原作モノが多い中、オリジナルでシリーズ化が期待できそうな作品だっただけに惜しいです。独特のテンポとリズム感。趣味の無い人生なんて!釣りバカ日誌?合掌。
常にひょうひょうとしているのが持ち味の若者が、中心人物としてタブルで登場してくるところをどう思うかで、本作への評価が激しく変わってくることでしょう。
はっきりいって『釣りバカ』と作りは一緒でした。趣味の鉄道を活かして、本社が手を焼く物件を口説き落としてしまうところなんてそっくりです。しかも予定調和にトントンと決まっていくところは、まだ『釣りバカ』の方が波乱を感じました。小粋で軽妙なところは悪くないのですが、余りに箱庭的なんですね。これは監督の前前作『わたし出すわ』でも強く感じたことなんです。箱庭的とは、全て監督の小さな世界に役者やロケ現場を飾って、自己満足で動かして楽しんでいるような観客無視の映画趣味を指しております。故人となられた森田監督には大変申し訳ないのですが、ちょっと特異な主人公のふたりから、一体どんなメッセージを発信しているのか、そして本作に込められたテーマというものがイマイチよく伝わってこないのです。
安直に鉄道ブームに便乗して、JR九州とタイアップした企画なら鉄道ファンを舐めんなよといいたいですね。鉄道映画としてもちょっとネタがありきたりで、まだ『RAILWAY』シリーズのほうがマニアの心を擽る映像が多かったと思います。
主人公は、不動産会社で働く小町と父親が経営する鉄工所社員の小玉。現代の若者を描くと、すぐにニートとか格差とか嫌々薄給の仕事をしながら、不満を募らせるパターンにはまりがちでしょう。その方がドラマとしてはメリハリが浮かびやすくなります。けれども小町と小玉のコンビは、そんな演出者がイメージしやすい若者像とはかけ離れているのです。
実直な性格がKYと誤解された小町は、事実上の左遷にあたる九州支社へ転勤を命じられます。転勤後も地元の成長企業の社長を口説き落とすために、自分の会社の女社長に付き添いを命じられ、営業上のプレッシャーをかけられまくるのです。
一方小玉は経営に苦しむ社長の父親のぐちを聞かなければいけない。何と言っても銀行から繋ぎ資金が下りなければ、新規の顧客の仕事にも対応できなくなるのです。そんな
決して、恵まれた環境には見えないのに、彼らのなんと軽やかで誠実なキャラなんでしょう。生真面目、深刻にはなりすぎず。常にひょうひょうとしているのが持ち味の若者が、中心人物としてタブルで登場してくるところをどう思うかで、本作への評価が激しく変わってくることでしょう。
そんな軽快なキャラの小町と小玉のやりとりは、見ていて楽しいのも正直なところ。さすがは当代若手の演技派である松山ケンイチと瑛太が肩の力を抜いて、自然体で演じているだけのことはあります。二人を割と自由にアドリブを連発させたところに、森田監督の遊び心を感じました。なかでも小玉の父親にプロポーズする女性役を演じた伊東ゆかりに小指をかむ仕草をさせたのは、可笑しくて笑ってしまいました。会話や間の妙などは、森田監督ならではのリズム感なのだと感じました。
森田作品の見どころは、何と言っても人間同士の距離の取り方にあると思います。本作であるなら、駅のホームや列車の座席で向き合ったり、横に並んだりしているときの登場人物たちの表情だったり、立ち位置だったり、演技だけで登場人物の関係性を直感的にさらりと見せてくれました。そんな観客には意識させないところで細かくこだわりを持って描いてるのが森田流の真骨頂ではないでしょうか。
続編を熱望していたマツケンと瑛太でした。けれども脚本を書いた森田監督は既にこの世にはいません。でも鉄道あるところ限りなく連作は可能な企画ではあります。小町が言い寄られた女性に逆に振られるところなど、寅さんそっくりの本作です。そうであれば、いっそマツケンを2代目渥美清に仕立てて、小町を寅さんぽくしていき、山田洋次監督作品にしてしまったらいいのではないでしょうか。不動産会社勤務なら、スズケン勤務のハマちゃんやスーさんと出会うことだって不自然ではないでしょう。
電車おたくの楽しいお話
最初、予告編を見て、あまり乗り気でなかったが、森田監督の最後の作品と思い鑑賞してきました。電車おたくの映画ですが、そんなの関係なく笑える楽しい作品でした。趣味がこうじて、仕事を取り付ける話は釣りバカみたいですが。なんかほのぼのとした松山さんと瑛太君の感じが良くて続編があればと思いました。監督も考えていたようですが、残念です。誰か作って下さい。
これで江ノ電みたいのが走ってれば
小町と小玉、男同士目と目が合ってビリビリ。変な方向(愛とかLOVEとか)へいかなきゃいいなと思ったが、それはなくてよかった。その後も頻繁に効果音。意味わかんないけど悪くない。これって監督の趣味?とくにあずさがメガネをとっかえひっかえするシーンでは効果的だった。最近はアニメ原作やテレビドラマの映画化が多い。オリジナルで森田ワールド全開。「いいね!」「鉄が切れるなら人も切れる」なんて町工場の厳しい現実。鉄道という趣味を軸にした人と人の縁。女心が分からないボンヤリ小町と「いい人ネ」で愛に発展しない小玉。レゲエの二人組もGOOD。地主のランニング中のサッカーブリは監督のアイデアらしいが、プロモーション番組では監督の方がうまかった。「口立て」のつかこうへい、劇団☆新感線のいのうえひでのりも役者よりうまいといわれる。自分のイメージを体現する能力は演出家にとって不可欠なものかもしれない。マンションの管理人役で「の・ようなもの」の伊藤克信が出ていた。監督は死を予感していたのかもしれない。でも、こんなホンワカコメディーを最期に死んでいけるなんて幸せだと思う。
とりあえず今年の暫定ベスト1、デスね。
森田監督の作品は「家族ゲーム」しか観ていない。しかも観たのは、劇場で公開された当時。そして今、監督の遺作を観たというのは、とても不思議な感じがする。
鉄ネタ、鉄ヲタ満載の話だけど、それだけに終わらないユーモア感覚が、スクリーンから溢れ出てくる。場当たり的で人を無理やり笑わせるような、今風のギャグ・コメディではなく、ジワジワと染み込んでくる笑いのヴァイブレーションが、とてもいい。
その根本には、落語に通じる、なんともいえない、ギャグセンスがある。「の・ようなもの」で、売れない二つ目噺家の青春を描いたから、当然のこと。
圭と健太のふたりのコンビのキャラは、タイプは全く違うものの「八つぁん熊さん」のパターン。ボケとツッコミがふたりの間で場面ごとに変わるので、観ていてちっとも飽きが来ない。その上、この二人には「ボーイズラブ」という、スパイスがちょこっと効かせてあるので、可笑しさにひとひねりある。「の・ようなもの」で秋吉久美子が演じたソープ嬢、エリザベスもそうだったけれど、森田監督のこういったタイプの人たちへの目線は、コミカルだけれど非常に優しい。
脇で登場する「のぞみ地所」や「小玉製作所」の人たちも、基本的には落語に出てくる、「長屋の人々」であり、悪い気持ちを持った人たちでないところが、またいい。
台詞や編集を通じて出来上がった、と思われる映画的リズムが、とても落語的なので、もしかしたら観る人を選ぶかもしてない。そうなって、この作品にネガティブな評価が与えられたら、とても悲しいことだけれど、ある意味、ご自身の行く末を知っていたかどうか、今からは知る術もないけれど、森田監督の映画の原点に戻ってきた、と考えるなら、それはそれで、悦ばしいことではないか、と思う。
3月24日 丸の内東映
オタク映画というよりは、むしろサラリーマン映画
森田芳光監督といえば、「家族ゲーム」(1983)から始まり「武士の家計簿」(2010)まで、なにか特定の職業や環境にある人間たちの習性を観察的な眼で追った作品に定評がある。
今回は、鉄道オタク(通称“鉄ちゃん”)の若者二人を追った作品・・・という触れ込みだったが、観てみればサラリーマン(会社組織)を描いた作品だ。
それも、もしかしたら往年の東宝作品、森繁久彌の「社長漫遊記」やクレージーキャッツの「無責任シリーズ」「日本一シリーズ」のような色合いを意識していたのかも知れない。
実際、のぞみ地所の社長(松坂慶子)を取り巻く幹部社員に社長秘書といった面々は、そういう作品の色合いを出している。
ところが登場人物の相関が芋づる式に安易に繋がっていき、趣味が昂じて商談がトントン拍子に運ぶ有り様は、むしろ「釣りバカ日誌」のノリだ。
海を連想させる名を連ねた「サザエさん」のように登場人物の名を電車の“愛称”でまとめ、小玉(瑛太)の携帯の着メロが京急のモーター音だったりと“鉄ちゃん”的な設定が随所に見られて楽しい。
若い人は分からなかったかも知れないが、伊東ゆかりが登場するシーンでは『小指の想い出』のイントロが聴こえ始めた瞬間に吹いてしまった。
小玉の父親(笹野高史)のキャバクラ好きにも笑える。
それでも森田監督が撮りたかったのは「釣りバカ日誌」ではなかったはず、そう思えてならない。
いろんな路線の電車が出てきて、ロケーションがいいショットが続き、どれも一度乗ってみたい気分にさせられる。
ただ、役者が乗っているシーンはクロマキーによる合成が多く、映画を観ながら小町や小玉らと一緒に旅する臨場感に欠けたのが残念。
《お詫び》
最初の投稿の際、クロマキーによる合成が多々見られ、臨場感にかけるという記述がありましたが、製作に関わった方の奥様から“すべてロケで撮影したもの”というコメントをいただきました。
デジタル上映でそのように見えたのかもしれませんが、誤った記述をしたことをお詫び申し上げます。
趣味に仕事に恋にイキイキと♪
ユニークな映画を次々と発表し続けた名匠・森田芳光。
遺作となった本作は、肩の力を抜いて楽しんで作ったであろう、実にほのぼのとしたコメディ。
鉄道好きの青年2人が出会って、仕事に恋に奮闘していく。
2人共鉄道好きなのだが、好きな部分がちょっと違うのが何だか見てて面白い。
映画で言ったら、監督で見るか役者で見るかという微妙な違い。
そのちょっとだけ噛み合わないユルさが見ていて微笑ましい。
趣味がきっかけでサクセスしていく展開は、何だか「釣りバカ日誌」を連想させる。
趣味を持つのはイイ事だ。
森田芳光監督からの温もり豊かなエールとメッセージ。
釣りをしない釣りバカ日誌みたいな了見の映画
『家族ゲーム』『模倣犯』etc.で知られる邦画界の鬼才・森田義光監督最後の作品。
黒澤明の名作『椿三十郎』を敢えて織田裕二主演でリメイクさせる屈指の勝負師だったが、遺作は終始リラックスした雰囲気で進み、『間宮兄弟』路線のユル〜い喜劇だった。
鉄道好きがキッカケで友人となった松山ケンイチと瑛太が、東京←→福岡間を往復し、鉄チャンの知識を活かして仕事を成功させていく。
趣味を通して一世一代のプロジェクトを勝ち取る、オタクでナンボのサラリーマン噺は、鉄チャン版釣りバカ日誌と云えよう。
芸は身を助けるの典型で、世の中そんなに上手くいくワケねぇじゃねぇかってぇ程とことん暢気なテイストで眠たいが、時折、エキセントリックな掛け合いがテンポ良く、最後まで森田節が健在だったのは長年のファンとして感慨深かった。
最後に短歌を一首
『揺れる窓 トンネル抜けて 縁乗せて 路線交わり 春の流れよ』
by全竜
モテない男、モテない女は見に行くべし!
これが森田芳光監督の遺作とはねー、と鑑賞前には思っていたのだが、見るウチにどんどん引き込まれていった。
鉄ヲタのディテール(チェックのシャツの下に丸首シャツが見えるとか)などもなかなかこだわりがでていていい。
瑛太、松ケンみたいなイケメンはオタクの世界にはまずいないけれど、全体にそういう世界への愛情が漂っていて、見ていても心地いい。
鉄ヲタに限らないんだろうが、狭い自分たちの世界にいる人たちって、他の世界が見えない人種とも思えてしまうけど、一人ひとりはものも考えるし、行動もする。
他者との距離感をつかむのが苦手なだけで、決して変人だったり、悪い人間ではないのだ。
そうした平たく言えば、人間愛をよく森田監督は描いている、と思う。
彼の昔の作品「(ハル)」(1996年)にも通じる味わいだ。
人との交流が苦手なゆえに損をして、モテないままでいる多くの男性(女性)に、そうではない女性(男性)が手を差しのばしてもらいたい、この映画を見て…。
評価は3・5としたいところだが、遺作ということで★4つ。
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