劇場公開日 2012年3月24日

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「森田映画の終t着駅、乗り遅れた方は是非ご覧下さいね!」僕達急行 A列車で行こう Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0森田映画の終t着駅、乗り遅れた方は是非ご覧下さいね!

2012年11月1日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

笑える

楽しい

幸せ

早いもので森田監督が亡くなられてから間もなく1年を迎えようとしている。映画好きの私にとって森田監督の作品は、学生時代の思い出とは常に一体で、まるで親友のように、自分の隣に生きて私の生活を見守ってくれていた。
『のようなもの』81年に始まり『家族ゲーム』『メインテーマ』『それから』そして大好きな作品だった『未来の想い出』『ハル』も忘れられない作品だ。
80年代から、今後の邦画界を担って行く才能溢れる有望な若手監督達として称賛される監督の中に、いつも彼の存在が有り、その中でも森田監督は常に中心的存在として、特別輝いていた!
その魅力と言えばブラックコメディーからシリアスものや、アイドル映画をも含め、その才は特定のジャンルに囚われる事無く、オールマイティーで、常にその時代の匂いを映像に封じ込める天才的才能が有ったと私は思うのだ。
森田作品が好きな私は彼の映画がどう評価されるのか、『黒い家』はアメリカの映画祭にまで行って観たものだ。
時代の匂いを巧みに映像として画面に撮り込んで行く事が出来るその秘密は、きっと脚本と監督を常に一手に、1人でこなしていたからこそ、彼の映像には独特のセンスが光輝いていたのだろう!それはまるで、日本のW・アレンの様に個性的で、ハマる人には最高の監督だ。
常にそれぞれの時代の空気を映像として遺してくれた森田監督は、近代文化の語り部的存在だ。
『僕達急行A列車で行こう』この映画も一般的には、鉄男と鉄子などと呼ばれる、鉄道オタクとして風変わりな存在としてしか世間からは見られない様な人々を、実はこんなに趣味に生きる人達の生活は豊かで素晴らしい世界を持っている事を教えてくれていたのだ。
そして人の人生での出会い、ご縁と言う不思議な、人と人との繋がりの素晴らしさと大切さとを笑いの中で、実にホノボノと描き出してくれる。
今日では、総てが八方塞がり的な閉塞感の中で希望も無く、生きる人が多い日常の中で、今の生き方を、まるで列車を乗り換える様に、少しばかり生き方の方向や、速度を変えてみるだけで、人生と言う旅の質や方向は180度も変化すると監督が言っているようだ。
そして車窓の風景が変化する様に、人生で体験する質も感じ方も、見違えるように変化する、人生に対する気持ちや感じ方までも変化させる事が出来るその秘訣をそっと遺言の様に打ち明けてくれているのかも知れない。ひょっとすると、本作は森田監督が亡くなる前にあの世を垣間見て、私達に伝え残してくれた監督からの「未来の想い出」なのかもしれない!実に瑛太を始め、松山ケンイチも松坂慶子も楽しそうに、活き活きと演じている!
これ程ほのぼのと生きる素晴らしさと、希望を胸に抱き、日々自分の生き方を愛する事を、その素晴らしさを描いたヒーリング映画は他に無い!そして、もう森田監督の新作が観られない事は残念でならない。天国での、森田監督の永遠のご冥福を祈って止まない!森田監督ありがとうございました!やっと涙せずに笑って遺作を楽しく観られました。

ryuu topiann