「エールは続く…。」天国からのエール ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
エールは続く…。
世の中にはたくさんの偉人がいるけれど、
弁当屋のおじさんが(すいません)子供達のためにここまでやるのか、
と話を聞いただけで涙が出てしまう物語。
そしてそんな偉人がどうして、こんなに早く亡くなってしまうのか。
理不尽だし、神様あんまりだ…と思うのだが、運命は計り知れない。
彼をニイニイと慕った高校生たちも、彼のことを大好きだった家族も
天国から見守られて元気に生活を、音楽活動を、続けているそうだ。
モデルとなった仲宗根陽さんのドキュメンタリーを少し前に見たが、
子供達を見守る「目」がとても温かく厳しく優しかったのを覚えている。
人生に大切なことを教えてくれたのは(私もそうだったが)
教科書に載っている偉人ではなく、身近な他人だったりする不思議。
身内でもなく友人でもなく恋人でもない、もちろん先生でもない^^;
赤の他人が親身になって力を貸してくれるその理由ってなんだろう。
学校内でも町中でも、音がうるさいと言われバンドの練習ができない
高校生を見かねた弁当屋の主人・大城陽(阿部寛)は、自宅の空き地を
自費で改装、無料で彼らの練習スタジオとして貸し出すことを決める。
その背景には、昔親友だった友だちの「死」が絡んでいるようなのだが…
家族に相談もせず計画を推し進めた陽だが、彼の強固な意志に負けて
妻や母も無料で弁当をふるまい、高校生バンドを応援する。やがて、
その無料スタジオ「あじさい音楽村」がラジオやテレビで取り上げられ、
ますます夢に近づく高校生たち。陽は身体の不調を隠し応援するのだが…
実話というだけでつい感傷的になってしまうものの、若者達が夢を追う
姿がとてもまぶしくリアルに描かれて好感が持てる。
今時の若者には夢がない、と言われるが(すごく寂しいよね、それって)
○○になりたい!って普通は心のどこかで一度は考えることだよなぁ。
どうせ頑張って夢を追ったところで…と、今の社会の在り方を嘆いたら
キリがない現状なんだけれど、それでも!やはり若さが持つエネルギー
は果てしないものだ。ダメもとでガンガンぶつかって欲しいなぁと思う。
私らのような大人は、それを応援してあげないといけないんだ、本当は。
ベタな熱血ぶりが映える阿部ちゃん!とてもいい熱演を観せてくれる。
妻・ミムラも素晴らしい奥さん、バンドボーカルの桜庭ななみも等身大。
仲宗根さんは夢半ばで倒れ、総ての成功を見納めることが出来なかった。
しかしその夢はまた高校生達に引き継がれ、次の飛躍へと繋がっていく。
「あじさい音楽村」出身のバンド、ステレオポニーのエンド曲が胸に響いた。
(誰かの役に立てる自分でありたいと、こんな私でも常に思っております…)