「老いてなお現役。」木洩れ日の家で ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
老いてなお現役。
名画座にて。
とにかくこの作品は、1915年生まれで撮影当時91歳の現役女優、
D・シャフラルスカの(ホラーとも少女ともとれる)演技の妙に尽きる。
冒頭から失礼な女医にハッタリをかますところなど、もう絶品!^^;
こういう元気なお婆ちゃんにはいつまでも長生きしてもらいたいと、
そんな願いすら込めて観てしまう不思議な作品である。
モノクロームの(一瞬不気味な)映像美に映し出されるその屋敷には
今では老婆と一匹の犬だけが住んでいる。
隣家2件を覗き見ることが趣味のこの老婆は、愛人を囲う成金男から
破格の値段でこの屋敷の売却を提案されるが(もちろん却下)、しかし
自分の息子が一枚絡んでいることに絶望、一時は死を考えるも(爆?)
んなわけないでしょ!と自ら最期の逆転劇を演じてみせる。
まぁ~お見事、お見事。物語としては特に変わり映えするわけでなく、
行き着く所へ行き着くのだが、その不気味でユーモアに満ちた老婆の
とる行動に、幾つになってもこんな風に颯爽と生きられたならと願う。
途中で何度も垣間見える過去の残像は、どれも美しく(彼女もねぇ)
ほとんど共産圏に取り上げられた忌まわしい記憶を覆い隠しながら、
静かな余生を送りたいと願う1人の老婆の懐疑と孤独を映し続ける。
傍らに寄り添う犬の演技!(あまりに素晴らしいので言うことなし)
たったひとりの親友の如く最期まで主人公に尽くすこの犬の名演が、
更にまた深い感動を巻き起こす…。
年老いた両親をどうするか。なんていう問題はどこの国でも同じだ。
子には子の、孫には孫の、それぞれの言い分なんて言うのもあって^^;
皮肉に満ちたユーモアも効かせてあった。
だけど一番の孝行は、彼女の好きにさせてあげることだ。
その力を備え、勇気と知恵を持つ老婆に、叶う提案などありはしない。
(未だ現役だそうで…日本にも百歳の監督がいるけど…芸は才を助く?)