クレアモントホテルのレビュー・感想・評価
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"女は幾つになっても恋する乙女"
“女は幾つになっても恋する乙女”
主人公のササがホテルに到着し、サマーズが登場した瞬間に、僕の中で「これは当たりだ!」とゆう思いがした。長年の直感で、自分に合っている気がしたのだ。
期待して来たのに、部屋も食事も今ひとつ。人の噂話ばかりする変な人達の視線。しかし、次第にササはこの空気に溶け込んで行く。誰も訪ねてはくれないけれど…。
いきなりイケメン君と知り合って、映画は動き出す。まるで『一日だけの淑女』の変形バージョンの様だ。
嬉しそうなササ。特にイケメン君に恋をしてしまった訳では無いのだが、まんざらでも無く、“そう”解釈されても致し方無い。
まるで絵に描いた餅の様にイケメン君と知り合い。イケメン君はイケメン君で、彼女になる女性とは王道中の王道の出逢い。
この辺りは観客の多くから苦笑されてしまうかも知れない。特に彼女との出逢いなんかは…「無え〜よ!」と言われそう。まぁ無いと思いますけどね(笑)
でもよく考えてみると、このイケメン君と彼女との関係って。元々ササがアーサーと熱烈な恋に落ちた経験を、そのまま再現しているかの様な恋愛模様を展開させているんですよね。『逢いびき』繋がりなんかその典型的な作劇ですね。
派手な銃撃戦などは一切無い。お金を奮段に掛ける様な超大作でも無い。エンターテイメント性とは一線を欠く。
でも僕がこの作品を好きな理由は別で。イケメン君を孫と偽り、宿泊客達から一目置かれていたが、その真相がばれたにも関わらず聴こえなかった。或いは見なかったふりをする人の優しさ・心遣い。ちょっとした心の変化には、「どうしたんですか?」:「家族でしょ?」と声を掛ける。そんなちょっとした気遣いがとても観ていて「ああ良いなあ〜」と思ってしまう。
僕はこうゆう映画が性に合うから観ていて嬉しくなってしまう。とっても居心地が良くて好きなのだ!
(2010年12月9日岩波ホール)
偶然は必然だからこそ。
名画座にて。
本国では2005年に公開、ずいぶん時を経てこちらにきた作品である^^;
いかにもイギリス~という佇まいが大切に描かれた作品。
滞在するホテルはやや侘しくてもそこに集う「ご臨終禁止」の老人たち、
そのユニークさと抱える孤独、不安、他人への興味でしか毎日の暮らし
を長らえることができない現実、巧く織り交ぜた上品なヒューマンドラマ。
主演のパルフリー夫人を演じたのはL・オリヴィエの奥方J・プロウライト。
最愛の夫を亡くし、娘の擁護から離れ、ロンドンのホテルで独り暮らしを
始めたパルフリー夫人。なぜ彼女がここへ来たのかは幾度も語られるが、
決して不幸な生い立ちの夫人でないことが明らか。余程の年金か遺産が
なければ(いくら安ホテルだとしても)長期滞在なんてできないことである。
ひとりの女性として晩年を過ごしたい、とはいえ、今まで娘や孫に囲まれた
生活から他人だらけの生活、見渡せば孤独な老人ばかり。つい公文館に
勤める孫のデズモンドを自慢してしまった彼女はいつまでも現れない孫の
ことが気がかりでならない。そんな矢先、歩道で転んで怪我をした彼女に、
親切にしてくれた青年・ルードと出逢い、孫のふりをして欲しいと頼むが…
彼女の高級な出で立ち、青年のイケメン度^^;、その彼女のアイドル度^^;、
まぁあり得ない程の配役の妙なのだが、抱える家族間の問題や将来への
不安など、描かれる生活感はどれも身近なものばかり。
母親の期待に添うことができず、未だに売れない作家志望のままの青年、
意を決して夫人に付き添ってもらい母親に逢いに行くが…。
娘や孫に追い出されたワケでもないのにホテル住まいを希望する老婦人、
独りになればなったで思い出すのは夫との歳月、自分に寄り添ってくれる
疑似孫^^;に心を寄せるが、彼はやがて若い彼女との生活に忙しくなる…。
おそらく人間はどこにいようが、誰といようが、独りなんだと私は思う。
孤独はきってもきれない親友のようなもの。自分に心を寄せてくれる人間が
多く傍にいることは幸せなことだが、それは永遠に続くものではないのだ。
孤独を愛せよ。とはいわないが、自分と向き合うには独りになるしかない。
ホテル住まいの老人たち、一見可哀相で仕方なく見えるが、いずれ誰もが
ああして何かを失い、独りになり、孤独と向き合って生きることになるのだ。
ホテルでボス扱い?だったアーバスノット夫人がついに倒れた時、
おそらくあそこにいる誰もが、何れ自分に同じ運命が訪れるのを実感した。
老婦人と触れ合うことで、青年も大きな心の成長を遂げる。
彼女を題材に一気に小説を書き上げた彼は、臨終間近の夫人の枕元に置く。
病室の外では実娘が看護師ともめている。なぜ早く知らせてくれなかった?
という娘に、ずっとお孫さんが付き添っておられましたよ…?には笑えた。
遠くの親戚より近くの他人。とはこんな時のためにある言葉か?と思った。
人生の終焉という寂しいテーマのみかと思えば悠然としたコメディでもある。
心臓に注意!と題した米国産ホラーを娯楽室で見るというので何かと思えば、
「セックス・アンド・ザ・シティ」だって!あまりに納得できて大笑いした。
(人生の終わり。がこんな風に迎えられるなら、それはそれで幸せなことだ。)
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