劇場公開日 2011年6月11日

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「舞台を観に来たのではない。映画を観に来たのだ。」テンペスト マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5舞台を観に来たのではない。映画を観に来たのだ。

2011年6月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

単純

物語は、夫である大公が亡くなったあと、頼りにしていた実の弟に裏切られ、国を追放されるという典型的なお家騒動噺である。
そこに醜い怪物だの道化師が配置され、主人公プロスペラは魔法を使って妖精エアリエルを操り復讐を遂げていくという、シェイクスピアによる古典的な戯曲が“素材”になっている。
映画化、つまりは映像化するにあたり、原作をあくまで“素材”として扱うか、それとも内容に忠実な構成にするか、ここは大きなポイントになる。
監督のジュリー・テイモアは舞台演出の出で、構成はもちろん、絵的にもいかにも舞台を観るような作風である。良くも悪くも、その枠からはみ出ることはない。
映画ファンとしては、これでは物足りないのである。映画ならではのカット割りによって、プロスペラの心の葛藤をもっと深く抉ることができたであろう。アントーニオとセバスチャンの画策や、ファーディナンドとミランダの恋もしかりだ。いくら孤島が舞台とはいえ、表現がこじんまりしてしまった。魔法も舞台的で、映画特有のダイナミズムに欠けている。せっかく舞台という制約から解き放されていながら、もっと自由な発想の「テンペスト」ができなかったものか。舞台には舞台の良さがあるが、舞台を観に来たのではない。映画を観に来たのだ。なんとも中途半端な産物としかいいようがない。
好きな女優のひとりヘレン・ミレンの演技もギクシャクして見えた。

マスター@だんだん