奇跡のレビュー・感想・評価
全55件中、41~55件目を表示
奇跡とは…
九州新幹線全線開業の日、鹿児島と福岡の新幹線が擦れ違った時、“奇跡”が起こる。
両親の離婚で鹿児島と福岡に離れて暮らす航一と龍之介の兄弟は、家族が再び一緒に暮らす事を願う為、小さな大冒険に出かける。
子供のお笑いコンビ“まえだまえだ”を主演に迎えて描く、「誰も知らない」「歩いても 歩いても」の是枝裕和監督作。
まえだまえだの2人が実に見事。
その2人や他の子役たちから自然な演技を引き出し、何気ない日常の風景や細やかな描写の積み重ねをすくい上げる手腕は、さすが是枝演出。
周りを固める豪華俳優陣の顔触れも見所。
奇跡。
改めて調べてみると、人間の力や自然現象を超えた出来事、通常では起きないような事が起こる事、と説明してある。
誰だって一度は奇跡を願った事はあるだろう。(もしなかったらどんな幸せ者だ?)
アニメの世界では、龍の玉を七つ揃えればどんな奇跡も叶えられたり、「それは君にとって魂を差し出すに足るものかい?」なんて深刻めいたり(笑)
この映画の中でも、子供たちは色んな奇跡を願う。
ラストで子供たちの願いがそれこそ奇跡のように叶った訳ではない。
しかし、子供たちの小さな大冒険の中に、確かに奇跡はあった。
日常の中のごくありふれた奇跡こそ、本当の尊い奇跡なのかもしれない。
あーあったあった。
小学生の日常を丁寧に描いている。
自分にもあったあったと思わずニンマリしてしまうシーンも。
自分たちの力ではなんともならないことを
奇跡を起こすことで、なんとかしようとする。
自分もそんなこと考えたことあったなぁ。
観終わったあと、あったかい気持ちになれた映画でした。
見終わったあとの気分はなかなかよかったと思います
私の苦手な(^^;)ロードムービー系。でも、割とほのぼのした映画で、見終わったあとの気分はなかなかよかったと思います。
両親が別居して、福岡と鹿児島で別々に暮らすようになった小学生の兄弟が、九州新幹線の一番列車がすれ違う瞬間を見ると奇跡が起こるというウワサを信じて、熊本まで出かけるというお話。
まえだまえだの二人がいい芝居をしています。お兄ちゃんは割と沈みがち。弟はいつもポジティブ。
新幹線を見に行くという冒険の前と後で、彼らの生活は何がどう変わったわけではないけど、沈みがちだったお兄ちゃんはちょっとだけ前向きになった感じがしました。このちょっとだけ何かが変わったという演技がよかったと思います。
もっと鉄道にフォーカスが当たっている映画かと思っていたのですが、そうでもなかったかな。
個人的には、何度か訪れたことがある鹿児島の街をスクリーンで見ることができて楽しめました。
今年見た中で最悪
まず、なんか無駄にいい俳優使いすぎって!笑
安部寛とか長澤まさみとか使ってんのに、こいつら一切物語りに絡んでこない。なんで、こいつら使ったの??あと、父親役のオダギリジョーが僕の中で、すごい違和感ありまくりでした。顔が似てないとかじゃなく、オダギリジョーと何年も暮らしてたら、まえだまえだみたいな子供ってできないんじゃない?
映画もすんごいテンポ悪いし、そもそも新幹線のうわさみたいなんも、説得力ないよ・・・。周りのみんなが、「新幹線がすれ違うとき・・・・」みたいなこと言ってるシーンが入ってるならまだ説得力もありますが、友達が二人で話してるシーンだけみせられても・・・・。
あと、九州新幹線とのタイアップ映画かなんかですよね。これ?一切九州宣伝してませんよ。
他にもいろいろあるけど、この映画都合よすぎなんだよ!!子供たち一切苦労してませんよ?なんで、こんなんで成長できんの?笑 僕にはまえだまえだの兄の決断(今を受け入れて成長する大事なところ!)が、それまでの物語のせいで、ただの諦めの言葉にしか聞こえませんでした。
もう見たことをなかったことにしたい!
奇跡を信じて生きれ、子どもたち。
まさか九州新幹線を題材にした映画が出るなんて、
鹿児島県出身の僕としてはホントに嬉しい。
だけど綺麗な風景とか名物料理ばっか出てくるような
単なるPR映画みたいになってたら金の匂いがしてヤだなあと思っていたが、
そこは是枝監督。そんな映画にはなっておらず一安心。
むしろ火山灰の描写で観光客が減るんじゃないかと心配した(笑)。
物語の主役は、オトナの勝手な事情で離ればなれに暮らしている兄弟。
また家族4人で暮らしたいと願う兄と、
なんとなく今の生活を気に入ってる弟。
新幹線にちなんだ、『願い事が叶う』という奇跡の噂を聞いた兄弟は、
友達と一緒に、願いを叶える為の冒険旅行を企てる……。
前半こそ物語の着地点がなかなか見えず不安を覚えるが、
子ども達が旅行計画を練る辺りからが楽しくてしょうがない。
旅行資金を必死にかき集める姿や旅行先での右往左往っぷりに、
もう「頑張れガキ共!」と声を大にして応援したくなる。
“まえだまえだ”の二人を始め、子役みんなの自然体な感じが良いね。
いわゆる天才子役的な、不気味で人工的な匂いがしない。
やっぱりここは監督の演出の巧さかね。
脇を固めるオトナの役者達も素敵。
出番は少ないが鹿児島弁のアクセントは中村ゆりが一番上手だったなあ。
逆に、橋爪功どんはイマイチ(大御所にまさかのダメ出し)。
この映画のいう“奇跡”とは、“夢が叶う事”とほぼ同意。
家族で暮らしたい。
仮面ライダーになりたい。
好きな先生と結婚したい。
絵が上手になりたい。
女優になりたい。
他愛の無い夢、途方も無い夢、
子ども達が思い描く夢の数々が微笑ましい。
そして“奇跡”の瞬間が過ぎた後の何とも言えない侘しさと、
旅行を通して少しだけ大きくなる子ども達の姿に、
何だか泣きたくなる。
奇跡なんて一生の内に一度起こるかどうかも分からん代物だけどなあ、
自分の夢に思い描いた通りに生きてる大人なんざほッとんどいないけどなあ、
それでも君らは奇跡を信じて生きれ、子ども達。
絵空事みたいな夢を、できる限り長く信じて生きててくれ。
奇跡を信じられた昔を懐かしく思える、可愛いくて優しい映画。
あ、ところで“かるかん”は確かにボンヤリ美味いよ。
あと“かすたどん”てお菓子も有名。好きです、かすたどん。
鹿児島にお越しの際は是非。
さりげなーく鹿児島名産のPRをして、今回のレビュー終わり!
<2011/6/25鑑賞>
阿部寛の大きな手のアップにグッとくる。
是枝監督、1コマ1コマ映像でしっかりと語っていましたよ~。
物語は~
両親の離婚によって、母親と鹿児島に暮らす兄と父親と福岡で暮らす弟。
九州新幹線が開通する日
1番列車の上りと下りがすれ違う時、願いを叫ぶと叶うという噂を聞いた兄の航一。
もう1度家族4人で暮らしたいと願う彼は弟龍之介を誘い
1晩泊まりの旅に出るのですが・・
兄・弟を演じる【まえだまえだ】の2人はサスガの演技。
是枝監督が彼らの為に脚本を書き変えた、というのも頷けます。
兄の航基君の日々不満を抱える表情や
弟の旺志郎君の将来、横山やすし2世を名乗れるのは君だっ!!と感じさせるテンションの高さ。
必見です。
登場人物。橋爪功演じるおじいちゃんや、旅を共にする友達たち。
一人一人のエピソードも良いバランスで描かれていますよ。
弟君のクラスメイト、女優志願の恵美ちゃんは
本木雅弘さんの娘、内田伽羅ちゃんが演じていますが
彼女に起こる奇跡も素敵~。
ほんのチョットしか出演シーンはありませんが
デリカシーに欠けるお兄ちゃんの担任、阿部寛もこれまた良くて。
彼の大きな手で航一君の肩をグッと掴むシーン。
好きだなぁ~~~。
同じ両親から生まれた兄弟でも、持って生まれた個性があって
家族に対する想いは大きく違う・・・
そのあたりも上手に、私には伝わってきました。
この旅を通じて、一番大きく考え方が変わった兄、航一君をはじめ
子ども達のひとまわり成長する姿を
是非!劇場でご覧になってください。
奇跡、星は~5つです
ほんのりと幸せ。
子供を撮ることに定評のある是枝監督、今回は漫才兄弟のまえだまえだを
使って、実にのびのびとした子供時代を撮ることに成功している。
ただし昨今の、「いかにも子役」ちゃんたちが醸し出す世界観はまるでない。
アイドル化した動物たちが「いかにも」目線でカメラを見るような仕草もない。
そういった、完全化されたドラマ性を求めると…エ?何も起こらないじゃん。
という肩透かしを食らうことにもなる作品。でも、自分の子供時代を思えば、
あったんじゃないのかなぁ??こんなバカみたいな冒険とか、秘密行動とか、
親に嘘つく時は必ず「誰誰ちゃんの家で勉強会」^^;って、この常套句大好き。
奇跡が起こるから面白いんじゃなくて、奇跡を起こそうとするその行動力が、
いちいち子供らしくてい~じゃないのv私はこういう夢を持った子供が観られて
とても嬉しい。子供たちが夢に向かってキラキラしている姿は本当に愛らしい。
つまんねぇ。とか意味ねぇ。とか言う前に、旅にでも出てみなさいって、少年!
成長したいのなら、まず行動だ。(なに勧めてんだろ、私は^^;)
さて。。この兄弟くんが於かれた状況はけっこう過酷だ。
なんでこう…離婚するときに子供を分けたりするかなぁ~?といぶかってたら、
なんと!弟の意志で父親についたのだという(爆)なんでぇ?^^;
一緒に暮らしたくて仕方ない母親と兄は、なんとか弟を取り込もうとするが、
当の弟くんはどこ吹く風♪気ままな父親と自由を謳歌しつつ、過酷な現実にも
向き合っていた。弟くんの意見はこうだ。父親と母親がケンカばっかりしてた、
あの同居生活に戻るなら今の方が幸せだ。ちゃんと上手くやっとるで。ときた。
母親に逢いたい、兄貴に逢いたい、の前に家族の在り方を見極めてしまった。
このオトナ感^^;
そして兄の方はといえば、常に周りを大切に、家族の幸せを第一に、自分が
どうにかしたるねんで!と兄としての役割に対する責任感が強い。長男てのは
こういうものだろうな…まずは自分が。まずは頑張らねば。あ~この頼もしさ^^;
実の兄弟、ということもあってそのあたりは実に自然に演技ににじみ出ている。
ともすれば、漫才ギャグ?になりかねない芸達者な浮わつきを、周りの子供が
一気に素人まで押し下げる…^^;この絶妙な(爆)素人台詞や子供らしさもいい。
いや、ある意味この子たちも、見事に玄人→素人に為りきっているワケだけど。
子供目線で語るいい加減な夢や未来、奇跡、お金のやりくり(爆)ホントいいわ。
オトナになって…歳をとって…汚くなる(って言ったら聞こえが悪いけど^^;)
その手前、一生懸命何かを目指したり、まっすぐに諦めないで頑張ったり、
やめておきなさいよ。と思われることにも夢を描ける創造力は素晴らしい。
その、バカで下らなくて親に心配ばかりかけてきたような行動の一つ一つが、
それから何十年か経ってこんな風に映画やドラマや小説なんかになってみると、
同年代が皆して涙ぼろっぼろに流して(爆)喜び懐かしめるお話になるんだから。
子供時代の想い出は、み~んな宝物になるんだよ、少年!
今作では思いきり脇へと流されたオトナ名優の皆さん^^;、
彼らの見守る演技態勢も良かったですねー。かるかん作ったおじいちゃんv
ぼんやり。。うっすら。。あ、ほんのり!!なんてイイ言葉なんだろ。
幸せも未来も、まさにかるかんのように…ゆったりと、完成されるんじゃないの。
それでいいんじゃないかと思う。
今の子供たちは頭がいいから(爆)実際に起きていることを本当は理解している。
どうにもならない世知辛い現実も、本当はオトナ以上に敏感に感じとっている。
それでも笑顔で頑張ろうとする子供たちに何かを教えられた気分になる作品だ。
そうだ世界平和、奇跡を祈ろう、少年!
(こんな可愛い子供たちが生まれてきたことが奇跡。生きていることも奇跡。)
今日の一句『たかがガキ されどガキ行く 夢の旅』
しっかり者の兄は不器用で哀愁を感じさせる陰を、お調子者の弟はスルリと世渡りを器用にこなす陽をと、漫才では過剰気味だった売りの愛嬌を各々のキャラクターに投影させ、個性をしっかり確立している。
『誰も知らない』で子役の素の人柄を導き出した是枝裕和ならではの演出論が見事に発揮された賜物と云えよう。
また、阿部寛を始めとする是枝組の常連に加え、長澤まさみetc.新規メンバーが揃った豪華でかつ、個性派の大人達が子供達を囲んでいく事で、緩やかな反発力を芽生えさせ、自立への旅へと駆り立てるプロセスを、繊細でありながら大胆に表現していく。
特に、『歩いても歩いても』に引き続いて、トボケた祖母を飄々と演じた樹木希林は、境遇に苦悩する兄弟の憂鬱な気持ちを和らげる貴重な存在感を放ち、笑いを誘う。
シビアな現実を前に否応無しにズル賢く大人へと成長していくそれぞれの一歩一歩が、純粋無垢な幼き夢と対峙させる不思議な御伽噺に仕上がっていて興味深い。
大人達の都合でハメ込まれた社会に対し、適合と反発を織り交ぜながら、自己のアイデンティティを構築させていく子供の進歩を、《旅》に照らし合わせて展開させる創造力は、驚きに似た共感を産ませ、惹き付けていく。
熊本に集合し、いざメインの冒険が始まると、行き当たりばったりの中に出来過ぎた物語軸を感じ、やや冷めてしまった。
良い意味でも悪い意味でも
「こいつらクソガキやな」
って思わせるガキ本来のニクたらしい生意気な部分に欠ける。
あんなに周りに迷惑かけたのに結局、エエ子のまんまなのだ。
旅に大人がすんなり理解してくれる距離感にも疑問は尽きない。
しかし、あの計算高いアドリブ能力こそ今作が描こうとした子供のサバイバル術が象徴されていて、表情がより活き活きしていた気もしたから、小難しく観る事自体、野暮なのである。
自由奔放な人間性+緻密な計算×(応酬+共存)=面白味
は、漫才でも映画でも当てはまる方程式なのかもしれない。
いや、人生におけるテーマとも云えよう。
どんなに辛い人生でもオモロいオチで決着が付けれたら、幸福なんやけどな…。
ボヤキながら駅で独り佇む私は、「富士山噴火して、全部チャラなったらエエねん」と前田の兄貴のように青空を見上げた。
まだまだガキのまんまやなと実感した帰路に短歌を一首。
『擦れ違ふ 風を奇跡と 云ふのなら 大人になるのは 奇跡なんかな?』 by全竜
どんな奇跡が・・・
主演の「まえだまえだ」の素の表情がとても良い。
お笑い芸人として活躍中の二人。
先輩芸人相手に話している場面を見たことがあるが、機転が利いていて、よく気が付き、それでいて嫌みのない、そんな二人だった。
この映画中の二人と同じだ。
少し繊細な兄の航一。
天真爛漫で、ちゃっかり者で、しっかり者の弟。
両親に対する見方にも、違いがある。
そんな二人の笑いを誘う話術がとても素敵だ。
もう一度家族4人で暮らしたい!!
この願いを叶えるべく兄の航一は、ある瞬間に望みを託す。
子供達だけの冒険の旅の始まりだ。
起伏が少なかったようにも思うが、これくらいで良いのでしょう。
まだ幼稚園児だった頃、兄と二人で電車の線路沿いに、遠くまで大冒険したことを思い出した。
子供って、こういう冒険をして、大きく成長するものなんだろうか。
≪ぼんやり≫が≪ほんのり≫に変わる奇跡。
ステキです。
子供達を引き立てる豪華な大人の俳優さん達。
お見事です。
家族のあり方を描く傑作
本作は是枝裕和監督による「家族」をテーマにしたドラマである。大物俳優が配役されていたり、「奇跡」というタイトルが「感動を誘う物語」であることを想起させてしまったり、あるいは「九州新幹線」とタイアップして作られた映画であることから、それらを目当てに劇場を訪れた人が多いだろうが、これから鑑賞される方は過去の是枝作品を味わってからご覧になることを強く薦めたい。個人を描くドキュメンタリーの雰囲気は「ワンダフルライフ」であり、子どもへの眼差しは「誰も知らない」であり、家族の描き方は「歩いても、歩いても」である。「奇跡」はそれに続く作品であり、是枝作品を知る人なら、この作品は集大成のように感じられることだろう。あるいは、是枝作品の入門として鑑賞し、続けて過去の作品を追いかける楽しみ方もいいかもしれない。一つだけ確かなことは、「俳優」や「奇跡」や「新幹線」を期待して観ていただきたくないということだ。ぜひ作品全体を味わってほしい。
多くの人に観てもらうことを意識しているのだろうか、是枝監督のファンであれば、本作は少々説明が過剰ではないかと思われる箇所や、音楽の挿入がくどく感じられる部分があるかもしれない。たとえば映画の冒頭で所在地が表示されたり、火山噴火のアニメーションが挿入された。おそらくそのような表現に頼らずに制作することも可能だったのではないか、いやむしろその方が変にファンタジー色を帯びずに人間を描くドラマとして成立させることができただろう。観客の知性や想像力を信じるか、それとも「わかりやすさ」を選ぶのかは難しいところだが、観客を限定せず、子どもからお年寄りまで世代を超えて楽しめる作品に仕上がっているのは確かだ。子どもの躍動感と相まって、いままでとは違う味わいの作品となっている。
ただし、これらの事柄はこれまでの是枝ファンを裏切る結果にはなっていないだろう。両親の離婚を契機に離ればなれに暮らす家族とその日常を、「子ども」というメディアを介して確かに描いている。これだけで十分であり、「奇跡」はまさにそのような映画である。奇跡が起きようが起きまいが、新幹線が登場しようがしまいが、作品の評価にはなんら影響はない。(むしろない方がいいくらいであり、まさに本作はそのように作られているのが素晴らしい。)
家族と一緒に暮らすことはできないことを兄弟ともに知りながら、それでもその奇跡を信じて旅をする物語、と本作を簡単に語ることは可能なのだが、そのようにだけ語ることは明らかに過小評価である。実際、旅のシーンは物足りなさを感じるほど少なく、目的地へもトラックに乗ってあっという間に着いてしまう。重要なのは、奇跡を思い願いをかける場面と、その後の子どもの、家族の心の変化の方である。故に、冒険に至るまでの子どもの描き方、家族の描き方は非常に丁寧である。これを冗長と感じるかどうかは観る側の心の持ち方次第である。新幹線の轟音と共に静かに現れる(洗われる、あるいは失われる)思いを、この映画で確かめてほしい。泣ける人もいれば、元気に人もいるだろう。何を受け取るかは、観客一人ひとりに委ねられている。説明が過剰と先に記したが、兄弟の願いが最終的にどのように変わったのかはわからないように作られている点は好印象だ。
本作はストーリーも上質だが、それにも況して子どもたちの演技や自然な振る舞いに心を奪われてしまう。繊細で多感な性格の兄・航一、元気いっぱいの弟・龍之介をまえだまえだ(前田航基、前田旺志郎)が見事に演じている。うまく新しい環境に馴染めず家族一緒に暮らすことを考えるあまりに「桜島の噴火」という非現実的な奇跡を願ってしまう兄、家族が離ればなれになったことを適当に割り切って今を明るく楽しく生きようとする弟という設定は、まさにこの二人のために作られたような設定だ。それが見事に奏功し、彼らの魅力が十二分に発揮されていることは疑いようがない。二人は対照的な性格ではあるが、電話のシーンや駅のホームでの再会シーン、軒先でのポテトチップスのやり取りや会話における絶妙な間合いは、あの兄弟でなければ実現しえなかったものだろう。テレビでの露出が多い子役だが、この映画でしか感じられない魅力が非常に多かった。それは編集の妙という以前に、本当に魅力的な兄弟であることを物語っている。ぜひ先入観を捨てて観ていただきたい。
(私は映画序盤、火山灰に慣れず「意味わからんわ」と電話越しにぼやく兄を、アイスを食べながら「意味わからんなあ」と返す弟の姿を見たささやかな瞬間に、二人の魅力に引き込まれてしまった。)
ベテランである俳優が子どもたちの脇を固める形で好演しているのも、非常に印象的である。子どもを描くことに重点がおかれているだけに、時に背中や手などしか映らない場面も多い贅沢な作りだが、その姿や仕草でキャラクターを十分に演じられている。役それぞれに、どこか抜けていて頼りない部分のある大人を演じることで、子どもの姿が自然と浮かび上がっている。特に橋爪功、樹木希林の老夫婦の無駄のない演技は素晴らしいと感じた。
いくらかのファンタジーは含まれつつも、家族の日常と子どもたちの変化を描く本作を、この文章で何度もすばらしいと書いた。けれども、それはやはり日常である。それが素晴らしいのだということに気づかされる映画である。困難な現実や理性が邪魔をして、日常に嫌気が差している人は、この映画が今年最大の救済になるだろう。
「奇跡」という名の「日常」
キラキラ輝いている子供たち全員が素晴らしい!
それを絶妙の距離感で支える大人たちも良い味。
子供らしい自然体の活気と,純粋な心,
内面から滲み出る個性を活かした監督の演出が見事。
彼らが発散する「無垢」の数々に泣ける。
積み上げられる何気ない日常に好きなシーンが満載!
思い返すと
優しい気持ちで満たされるジュブナイルシネマの名作。
狙いすぎな感が・・・
初日に観てきました。
是枝作品、割と観ていて嫌いじゃないし今回も期待していったのですが、
前半(といっても3/4まで)ずっと入り込めず、何度も時計を観てしまった。
よくも悪くも是枝監督のいつもの色であり、それ以上のものではない。
「奇跡」だから見せられたもの。それが全然なかった気がしました。
今回も自然な演出と上手い役者さんたちが終結。
「BIUTIFUL」を観た後だったからかな。。。とても物足りなかった。
子供たちの自然な感じが良かったです。
もう少し感動できるかなと思ってましたが、ちょっと空振り感がありました。
この映画....前田兄弟の演技が光った作品.....非常に自然な感じでした。
脇を固める大人たち.....大塚寧々、阿部寛、長澤まさみ、オダギリジョー、橋爪功、原田芳雄、樹木希林・・・と大物揃い.....作品が締まります。
親の離婚で離ればなれになった子供たちの寂しさ、そして再び縁りを戻して欲しいという気持ちが伝わってきました.....。
九州新幹線の前線開業に上手く絡めて、奇跡は起こるのか.......。
元々楽天家でしっかり者の弟.....
「家族の幸せより世界を取ったよ・・・・」大人になったお兄ちゃん.....心温まりました....。
九州新幹線の勇姿.....もっと見たかったです!
かすかな希望が見えてくる
是枝監督ということでものすっごく期待してみたのですが、期待通り、いや、期待以上でした。
ストーリーだけ汲みとると地味かもしれませんが、静かに感動しました。
こんなに日常の美しさ、毎日がありふれた奇跡だということを表現できるのは是枝監督ぐらいです。
観て良かったです。もう一度(今度は映画館で)観たいな、と思いました。
音楽がくるりなのも良かったです。
映画は音楽と映像と言葉との総合芸術だというのを感じさせてくれる作品でした。
全55件中、41~55件目を表示