劇場公開日 2011年6月11日

「奇跡を信じて生きれ、子どもたち。」奇跡 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0奇跡を信じて生きれ、子どもたち。

2011年7月1日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

楽しい

幸せ

まさか九州新幹線を題材にした映画が出るなんて、
鹿児島県出身の僕としてはホントに嬉しい。

だけど綺麗な風景とか名物料理ばっか出てくるような
単なるPR映画みたいになってたら金の匂いがしてヤだなあと思っていたが、
そこは是枝監督。そんな映画にはなっておらず一安心。
むしろ火山灰の描写で観光客が減るんじゃないかと心配した(笑)。

物語の主役は、オトナの勝手な事情で離ればなれに暮らしている兄弟。
また家族4人で暮らしたいと願う兄と、
なんとなく今の生活を気に入ってる弟。
新幹線にちなんだ、『願い事が叶う』という奇跡の噂を聞いた兄弟は、
友達と一緒に、願いを叶える為の冒険旅行を企てる……。

前半こそ物語の着地点がなかなか見えず不安を覚えるが、
子ども達が旅行計画を練る辺りからが楽しくてしょうがない。
旅行資金を必死にかき集める姿や旅行先での右往左往っぷりに、
もう「頑張れガキ共!」と声を大にして応援したくなる。

“まえだまえだ”の二人を始め、子役みんなの自然体な感じが良いね。
いわゆる天才子役的な、不気味で人工的な匂いがしない。
やっぱりここは監督の演出の巧さかね。
脇を固めるオトナの役者達も素敵。
出番は少ないが鹿児島弁のアクセントは中村ゆりが一番上手だったなあ。
逆に、橋爪功どんはイマイチ(大御所にまさかのダメ出し)。

この映画のいう“奇跡”とは、“夢が叶う事”とほぼ同意。
家族で暮らしたい。
仮面ライダーになりたい。
好きな先生と結婚したい。
絵が上手になりたい。
女優になりたい。

他愛の無い夢、途方も無い夢、
子ども達が思い描く夢の数々が微笑ましい。
そして“奇跡”の瞬間が過ぎた後の何とも言えない侘しさと、
旅行を通して少しだけ大きくなる子ども達の姿に、
何だか泣きたくなる。

奇跡なんて一生の内に一度起こるかどうかも分からん代物だけどなあ、
自分の夢に思い描いた通りに生きてる大人なんざほッとんどいないけどなあ、
それでも君らは奇跡を信じて生きれ、子ども達。
絵空事みたいな夢を、できる限り長く信じて生きててくれ。

奇跡を信じられた昔を懐かしく思える、可愛いくて優しい映画。

あ、ところで“かるかん”は確かにボンヤリ美味いよ。
あと“かすたどん”てお菓子も有名。好きです、かすたどん。
鹿児島にお越しの際は是非。

さりげなーく鹿児島名産のPRをして、今回のレビュー終わり!

<2011/6/25鑑賞>

浮遊きびなご