ラビット・ホラー3Dのレビュー・感想・評価
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ウサギ殺し
ぴくぴくと痙攣するウサギを一思いに殺してしまう弟・大悟。ショッキングな映像で始まるので、おどろおどろしい内容を期待してしまう。そして、そのことで小学校の同級生がウサギ殺しだとキリコを責めるのだが、安楽死させる優しい心を持った弟を自慢げに語るキリコ。次の日から弟は夢にうなされ、着ぐるみのウサギに誘われ遊園地へと行くのだが、いつしか夢遊病者のように自宅の2階にある納戸へと忍び込んでしまうのだ。絵本作家である父親(香川)が納戸を厳重に開かないようにしても不気味なくらい、納戸に入ってしまうのだ・・・
キリコと大悟の母親は違うのだが、どちらも不幸な死を遂げている。しかも大悟は母親の死と同時(?)に生まれているのだ。やがてキリコも弟と同じ夢を見る。そして、彼女の過去をも目撃する・・・新しい母親を連れてきた父親。最初に父から紹介されたときからキリコは母親を毛嫌いしていて、一緒に遊園地に行ったとき、メリーゴーランドで母親と突き飛ばしてしまい、病院に運ばれるも死亡してしまう。そしてそのとき大悟を自分の手で誕生させたのだ(無理があるぞ!)。
徐々にホラーというよりサイコホラーの様相を呈してくる。人魚姫をモチーフに用い、口のきけないキリコの過去が明らかになってくるのだ。「大悟なんていない。おまえの妄想なんだ!」という父親の言葉により、また『シックス・センス』の亜流かとがっかりさせられる。が、その時点では90分の尺のうち、まだ60分。キリコの1ヶ月の入院の後、やがて父親がキリコの妄想の賜物である大悟にとりつかれてしまうのだ。父親を助けようと、継母が不幸な死を遂げた遊園地とその隣にある廃墟となった病院へと向かう。大悟の霊(?)と戦うキリコ。しかし、彼女はらせん階段の最上階から非業の死を遂げたのだった・・・
『呪怨2』のときと同じように、扉を開けると異世界へと入り込むファンタジック・ワールドが描かれ、これは心地よい。映画館では3D上映であったようで、観ていたらもっと評価が上がるかもしれないなぁ。想像ではあるが、かつての飛び出す映画のような効果があったように思えるシーンが随所に。
話の内容的には妄想だったみたいな事で、ホラー映画というよりも、心に...
話の内容的には妄想だったみたいな事で、ホラー映画というよりも、心に抱えてしまった闇みたいなことを表現していた。子役も上手いし俳優陣がとても豪華。
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自宅にて鑑賞。C.ドイル:撮影、清水崇:監督・(共同)脚本。劇中でも登場する『戦慄迷宮('09)』の一種のスピンオフと云った体。途中、堤幸彦の『サイレン Forbidden Siren('06)』かと気付く。入子細工的な作り乍ら凡作の域を脱しておらずホラーとしても中途半端。“今里キリコ”の満島ひかりは以前からハスキーな声質と科白回しが気になっていたが、本作の様な役所の方が良いのかも知れない。“今里公平”の香川照之や大森南朋辺りは流石に説得力有り。蔭の有るお淑やかな緒川たまきも悪くない。60/100点。
・特典映像内のフェイク予告編、監督のモウ一つの才能が発揮されており、かなり興味深い。
・鑑賞日:2012年5月4日(金・みどりの日)
せつなくて
思春期の女の子が唯一の家族である父をとられるショックから・・・こんな悲しい物語ができるんですねぇ。
満島ひかりさん好きだなー。いつもハマり役、引き付けられます。
ホラーというよりも、悲しいお話しでした。遊園地、ウサギ設定はまたサイレントヒル(ゲームの方)のようでドキドキでしたけど
各々の家族の心を蝕むダークサイドの深刻さをガイドする恐怖のウサギは、悲劇の真実を紐解く唯一の開封者でもある
『呪怨』を産んだJホラーの巨匠・清水崇が満を持して挑んだ飛び出す恐怖は見応えあったけど、わざわざ嵐の日に出掛けて観るまでの作品じゃないね。
姉弟を狙うウサギの愛くるしさが、恐怖の世界に誘ぐ役割を果たす奇妙な存在感は『IT』のピエロを、
夢と現実とを行き来する呪われたループは『エルム街の悪夢』を彷彿とさせ、襲撃方法は至ってオーソドックスな印象を受けた。
『パラノーマル・アクティブテイ』の影響ゆえか、テロップに日時が細かく記入されていたが、その効果はほとんど無く、演出方法にも疑問を覚える。
神出鬼没な仕掛人と逃げられない被害者との関係性は、『呪怨』の距離感をそのまんまスライドしただけのような気がするし。
そのため、聾唖の満島ひかりや接し方に悩む父親(香川照之)の抱えるトラウマが肥大化し、精神面での闇の深さに、ホラーの重点が占めていくのは必然的やと思う。
手当たり次第にみんな発狂して、何が現実で、何が妄想なのか?結局、ぐっちゃぐちゃ…。
支離滅裂なサゲで逃げちまう救いの無い後味の悪さは、相変わらず清水節が炸裂しまくっていてファンは嬉しいかもしれない。
単なるお化け屋敷では済まされない苦味の濃い恐怖っていうのかな。
しかし、3Dに関しては、空に舞うウサギの毛や雪以外に意義は皆無やと思う。
では最後に短歌を一首
『震える血 渦へ誘ふ 白き羽 悪夢に堕ちて 叫ぶ筆先』
by全竜
3D表現のネクストレベル! 人魚姫は白昼夢でしか泳げない
清水崇監督、最新作!
まず驚いたのは、軽く目眩を覚えるほど強烈な3D表現。
螺旋階段、水滴といった3Dに適した表現は勿論、
何気ない家の中の描写までぐうっと奥まって見えて驚愕。
更に驚いたのは……
あるシーンで窓から射し込む陽光が恐ろしいほどリアルに感じられ、
わざと片眼をつぶってみると、陽光が殆ど左眼にしか映っていない事に気付いた。
左右の眼に入る光量の違い!
日常でも時々は感じる事があるが、それを3D表現として用いるとは、何という感性!
正直、『アバター』以来の衝撃である。
そしてサイコサスペンスとしての面白みだ。
この映画最大のドンデン返し=“大吾は最初からいなかった”は、
これまでドンデン返し映画をさんざん観てきた方々なら
きっと予想のひとつとして頭に浮かんでいただろう。
しかしそこに至るまでのストーリーテリングが実にミステリアスで良い。
暗い頭の中と現実をふわふわ往き来しながら
ひとつずつパズルのピースを集めてゆく感覚。
終盤の『強固過ぎる想像力が実体化する』という
『ダークハーフ』的展開も考え付かなかった。
梯子を登る弟の影に恐怖を覚えるのは、
そこまで積み上げてきたドラマがあったからこそ。
3D映画内の3D映画。
とぼけた風貌の巨大ウサギ。
著名なお化け屋敷を廃病院として登場させる奇妙さ。
冗談とも思えるアイデアの数々も、かえって幻覚と現実の合間、
映画と現実の合間を曖昧にしているように感じられてなかなか妙味。
“人魚姫”満島ひかりの儚げな存在感も映画と絶妙にマッチしていた。
ところでこれは他の方々も考えたかも知れないが……
この映画、実はやはり“きょうこさん”の復讐譚だったのではと僕は思っている。
序盤、父親が納屋に入るシーンで現れた“きょうこ”はキリコの幻覚では無かった。
そして最後のウサギ人形の蠢きも、キリコが事切れてからの事だった。
“きょうこ”はキリコの想像力によって育てられた息子を、
キリコに現実を認識させることによって奪い返し、
キリコと引き換えに息子を現世に生み出そうとしたのではないか?
なんつって。
『呪怨』のようなインパクトのある恐怖が無いのはやはり残念だが、
物語も映像も、観れば観るほど旨味が出てきそうな佳作。
あ、もし未見なら、姉妹篇的な位置に当たる
監督の前作『戦慄迷宮3D』も鑑賞する事をオススメ。
こっちもなかなか良いですよ。
<2011/9/17鑑賞>
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