「おそろしの国のウサギ」ラビット・ホラー3D 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
おそろしの国のウサギ
「呪怨」の清水崇監督によるホラー。
清水ホラーと言えば、同じJホラーの立役者である中田秀夫監督の“見せない”演出とは真逆の“見せる”演出が特徴。今回も“恐怖の象徴”が惜しげもなくバンバン登場。清水節は健在。
そこにファンタジーをプラスし、今までとはちょっと違う雰囲気のホラーに仕上がっている。
話す事が出来ないキリコとウサギを安楽死させた事のある大悟は異母姉弟。ある日、一緒に3D映画を鑑賞中、大悟が画面から飛び出して来たウサギのぬいぐるみを受け取った時から、2人は悪夢のような世界をさ迷う…。
ウサギに誘われて迷い込む様は「不思議の国のアリス」のよう。本当は恐ろしい不思議の世界はグリム童話のよう。ある理由により言葉を失ったキリコはさながら「人魚姫」。
恐怖の象徴であるチープな等身大のウサギの着ぐるみもいつしか不気味に見えてくる。
話す事が出来ないキリコ。原因は、過去のある罪悪感。その罪悪感から逃れるかのように弟に愛情を注ぐが、実は…。
全ては悲しい家族の関係が事の発端。
不穏で幻想的な雰囲気も良く、意外な展開のストーリーも興味惹かれる。中盤までは。
終盤は現実とも幻想とも言えぬ展開になり、ちょっとグダグダ。Jホラーのお決まり。
それはそれで、心の闇に囚われ続けるキリコがおとぎの世界をさ迷い続けるヒロインと当てはまるが。
後、あんまり怖くないのも難点。(いや、ホラーだったら致命的か)
劇場公開時3Dだったせいか、アトラクションのような視覚的な恐怖演出に偏り、Jホラー特有のじわじわ来る心理的な怖さは薄い。先にも述べた通り、それが清水ホラーなんだけど。
それでも、「貞子3D」よりかは全然楽しめる。
主演の満島ひかりがイイ。話せない役柄を熱演、不思議な魅力を醸し出す。
ホラー映画のヒロインも器用にこなし、やっぱり巧い。
また、川井憲次の音楽が雰囲気を盛り上げ、映画を随分と助けてくれている。