「よかった」エル・トポ 古泉智浩さんの映画レビュー(感想・評価)
よかった
物語は三部構成になっている。
第一部は子供と砂漠を旅して、大佐と5人の部下と闘う。ここでエル・トポは無敵の強さを見せる。ここで出会った女を選び、子供を置き去りにする。
第二部は4人の達人と闘う。女が一番の男を求めたためだ。女はセックスをした途端そんなことを言い出して、エル・トポは4人の達人に嫌々挑戦する。エル・トポの実力は達人には及ばないのだが、卑怯な手を使って全員を倒す。しかしもう一人の女が現れて、女同士で旅立ち、エル・トポは置き去りにされる。
第三部はエル・トポを助けた奇形人間たちと過ごす。彼らは洞穴で暮らしていて、町に出るには何日もかけてよじ登らなければならず困っていた。エル・トポは横穴を掘るために街に出てお金を稼ぐ。町の人々はとても心が醜く、我欲むき出して退廃的な生活をしていた。そこでかつて捨てた息子と出会う。横穴が完成すると、奇形人間たちが町に押し寄せる。町の人々は、奇形人間を射殺し、エル・トポも蜂の巣にする。ところがエル・トポは何発撃たれても鬼人のような強さを発揮して町の人々を殺戮する。
昔、見た時は分けの分からない映画だと思ったのだが、落ち着いて見るとしっかりと筋が通っていた。時折鮮烈な映像があって、驚くのだが、必要なカットが足りない場面もあり、悪く言えば素人っぽい。エル・トポが何発も銃弾を受けながら、立ち上がり町の人々を殺戮する場面はとんでもない迫力で本来描かれるはずなのだが、とても淡々としていて、凄惨な印象があまりなかった。
私事で恐縮なのだが、オレも運命には素直に乗る方で、エル・トポの人生を見ていると特に自分で何かを強烈に選ぶわけではなく、流れに流されるまま行動を選択している感じがした。しかし、「やり始めたことは最後までやり遂げるんだ」という強い意志があり、見事に実践していた。そしてそれが最終的に悲劇を招いてしまうのだが、それは結果としてそうなっただけの事なので、だからと言って彼が間違っていたわけではない。その場その場で懸命に取り組むことが重要であることを強く感じた。