「ホドロフスキー的ツァラトゥストラ」エル・トポ nagiさんの映画レビュー(感想・評価)
ホドロフスキー的ツァラトゥストラ
冒頭はホドロフスキーの息子が愛らしいシュルレアルな印象的なシーンに始まる。
エル・トポが「私は神だ」という超名言を吐き、砂漠内の強者を西部劇風に倒しながら、自身の精神昇華を目指すというストーリー、そして後半の「詩篇」においては「創世記」「預言者たち」とはうって変わり、洞窟内のフリークスらに神として崇められるエルトポが街へ降りていき、腐りきった下界の姿を目の当たりにするという壮絶な構成だ。
最強を目指す戦いの中で、やがて彼は命というなんの意味の無い殻に閉ざされた人間の無意味さを知り、ニヒリズム的絶望へと至る。
洞窟の外の世界は、五体満足にも関わらず、人間らは下らない宗教の崇拝や人種差別で溢れかえっている。エル・トポは、それらに対する批判_村を自らの手で殺害し自身の命も絶った。そして彼の精神は人間を超克し、息子に受け継がれた。そして物語は、大量殺害のあった村へと回帰する。
これはホドロフスキー的《ツァラトゥストラはかく語りき》だ。
映画という媒体を持って我々の精神に訴えかける、あるいは覚醒させようとしてくる。これこそが芸術であり、これこそが映画である。
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