「老いたり」人生万歳! 病気の犬さんの映画レビュー(感想・評価)
老いたり
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不遇のニューヨーク派を支え続けたウディ・アレン、変態と知性を軽やかに融合させた彼はいつの間にか名匠になり、まだまだ映画を量産し続けている。
正直、彼の膨大な作品の中で私は『マッチポイント』『アニー・ホール』の2作品以外はそれほど好きでない。好みの分かれる監督である。
『アニー・ホール』を思い出させるような作品として紹介されたこの作品だが、まさしく思い出させるような作品であって、当時のパワーのようなものは不足しがちでああ彼も老いているのだなと感じた。
主演のエバンはきいきいしとた声の頭の弱い女を演じるのが上手すぎて、頭にくるし、脇役は全体的に演技が弱い。ウディのまくし立てるおしゃべりも過去のチャキチャキの江戸弁のような趣を失ってしまい、どうも着地点が見当たらない映画で落ち着きが悪い。
ただ、老いたとはいえ、『マッチポイント』で魅せた老獪な映画作りは益々冴え渡っており、本来褒めるところが少なかったはずの映画をもう少しで佳作とよんでも良いのでは無いかというところまで押し上げた。映像のセンスとテンポはそんじょそこらの若手アーティスト気取りの監督を遥かに凌駕する。そしてこの映画にはそれだけしかない。
使い古された主張を今もなお力強く歌いあげるパワーに圧倒されつつも、やはり、あんまり面白くねえなと寂しさも感じる映画であった。
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