劇場公開日 2010年10月30日

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「こういう監督を、新鋭と呼ぶ」義兄弟 SECRET REUNION ダックス奮闘{ふんとう}さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0こういう監督を、新鋭と呼ぶ

2011年2月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

幸せ

デビュー作「映画は映画だ」で、鬼才、キム・ギドク監督の原作を堅実に、的確に形にしてみせたチャン・フン監督が、現代韓国映画界の名優、ソン・ガンホと若手の注目株、カン・ドンウォンを迎えて描く、政治ドラマ。

良い意味で観客を鮮やかに裏切ってくれる、快作である。
北朝鮮、韓国、スパイ。この悲しみ、裏切り、痛みという陰気臭さが付きまとうテーマを扱いながらも、本作ではその辛気臭さ、血なまぐささを徹底的に消し去り、スピード感に満ち溢れた爽やかさ、格好良さをしっかりと前面に押し出すことに成功している。

ここには、主役の一人を演じたカン・ドンウォンの存在が大きい。彼の長身から繰り出される蹴り、殴りには、空手の型にも似た清潔さと、美しさが醸し出される。言葉少なに作られた人物像も、韓国政治劇にありがちな暴力性、衝動的な怒りを細心の注意を持って削り取られる。ソン・ガンホの得意とする男臭さと危険な香りも抑えられ、可愛らしさすら感じられる。女性層を確実に取り込んでいこうとするしたたかさが光る。

展開の目まぐるしい変化に、多少なりとも置いてけぼりの印象を感じてしまうのは否めない。それでも、観客を約2時間、物語に惹きつける魅力をもっているのは確かである。

重厚かつ、強烈な痛みを抱えた政治ドラマを求める方でなければ、2人の俳優が作り出す格好良さ、潔さの世界にどっぷりと浸って欲しい。このようなユーモアとしたたかさを兼ね備えた監督を、私は、新鋭と呼びたい。

ダックス奮闘{ふんとう}