劇場公開日 2011年4月23日

「演技のテンションが極めて低く、冒頭から睡魔に襲われてしまいました。しかし主役のふたりの演技は凄く素晴らしい!」まほろ駅前多田便利軒 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

2.5演技のテンションが極めて低く、冒頭から睡魔に襲われてしまいました。しかし主役のふたりの演技は凄く素晴らしい!

2011年4月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 偶然知り合った元同級生でバツイチの男ふたりが繰り広げる便利屋稼業ぶりを、1年にわたって一月ごとのショートストーリー風に綴った作品。
 全体的に、ヤマナシオチナシに近く、演技のテンションが極めて低く、冒頭から睡魔に襲われてしまいました。そのくせ突然キレる台詞が出てきたり、ギャグを噛ましたり、まるでナンセンスものの舞台劇を見ているような感じでした。
 大森監督は、あまり観客に媚びないタイプの監督のようで、その場面でどうしてあのような台詞や演技を出させたのか、余計な説明をせずに、観客の感じたままに任せる手法を随所でとります。その観客を突き放した演出が、余計に本作が何を語っているのか分かりにくくしていました。
 原作は直木賞を取ったベストセラーながら、そのまま映像化したのでは、設定の無理がより印象的に浮上してしまいます。
 やはり映画化するのに、脚本と演出でどう料理していくべきかがポイントですね。

 それでも松田龍平と瑛太の演技は圧巻です。なかでもラスト近くに、産まれて間もない息子を死なせてしまい妻と別れた過去を語り出す10分近くの長回しのシーンを独りで独白した瑛太の演技には舌を巻きました。台詞を噛んだり、よどんだ言い回しが目立ち本来ならNGシーンでしょう。でもそれがかえって多田の気持ちをよく表して、凄く印象深い仕上がりになっています。
 産まれて間もない息子を死なせてしまい妻と別れた過去を持つ行天を演じた松田も、何を考えているのか分からないなかに、しっかり過去へのトラウマを感じさせる哀愁を見せつけていました。ふたり共に謎に満ち、飄々としていて全くつかみどころがない難しい役柄だけに、ふたりの好演が、脚本のマイナスをカバーして、要所要所で見せ場を作り上げます。

 全編を通じて流れているものは、親子の関係。特に親に愛されずに育った行天は、自分に子供が出来ることを拒絶。それでも女医の妻のたっての要請で精子を提供して、娘が生まれてしまいました。「契約」で生ませたわが子に父親らしい愛情を注げない行天は、深い罪の意識を抱いて、母子から別れて逃げていたのです。
 そんな行天をほっとけないのが多田でした。行天の妻から事情を聞き出し、「自分には与えられなかったものを、新しく誰かに与えることはできるんだ」と行天に迫ります。
 でも、多田は自分自身のことを行天に介入されるのは嫌いました。それだけのことで、なんと行天の共同生活を打ち切り追い出してしまうのです。
 共に暗い過去を抱える二人は、人と出会い、寄り添いながら生きて行くことで希望を見出そうとします。一端は別れたように見えたふたりは、ラストで一歩踏み出します。そこには幸福が再生し続けることをかろうじて感じさせてくれました。

 それにしても、便利屋の仕事で送迎を担当した小学生が、お小遣いで麻薬の売買の手伝いをさせられるという途中のエピソードにはびっくり。それを指示させているヤクザに、多田は警察に通報するぞと脅して、手を引かせます。普通なら消されてしまうところなのに、なんとかヤクザとも良好な関係になってしまうところは、ちょっとリアルティのなさを感じてしまいました。

 ところでキャストが豪華なのは、大森監督が役者一家に生まれて、幅広い人脈を持っているからではないかと推測します。ちなみに父親は、本作でも登場する麿赤兒。弟は、大森南朋。

流山の小地蔵