「狭い棺桶の中のワンシチュエーション」[リミット] kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
狭い棺桶の中のワンシチュエーション
自分の携帯電話ではなく、アラビア語で書かれた名前ばかり。そんな中、まず911をコールするとオハイオ州だった。家にかけても妻にかけても留守電だし、友人にかけてFBIや国防総省に電話したりする・・・そのうち犯人の番号にかけてみると500万準備しろというのだ。
“テロリストとは交渉しない”という言葉が被害者側にとってはとても冷たい言葉に聞こえる。それに犯人はテロリストではなく、アメリカのせいで家族を失った一般人であるとわかる。ただ、人質をとることを商売にしているだけだ。お互い民間人。何が違うんだ?
中盤からは現地の人質救出対策のブレナーとのやりとり。そして時折入ってくる犯人とのやりとり。あくまでも金を払わない政府の意向で同僚女性が殺されるビデオも携帯に送られてくる。ついにポールも自らビデオに撮って犯人に送るが、You Tubeにアップされ、瞬く間に4万超えの再生回数。介護施設に入っている母にも電話するが、認知症の彼女は意味不明の言葉ばかり。最先端の技術と介護問題。いろんなテーマが隠されていた。もっとも辛辣だったのは殺された女性と性的関係を持ったということで、拉致される前に会社に解雇されていたと通告されたこと。もしかすると一番ショッキングな事実だったかもしれない。
ほぼライアン・レイノルズの独り舞台。緊迫感のある前半と、社会派メッセージ盛りだくさんの後半と、ストーリーも優れていた。GPSで位置を特定できたとかで、F16戦闘機が攻撃。犯人が死んだという妄想までうまれてくる。そして、最後にはスコップで掘る音まで聞こえてくるものの、「違った、マーク・ホワイトの棺だった」という救出隊の無常の声。指を切ってしまった直後のことだったから、やっちまった感と安堵感がポールを襲う。しかし、落ちてくる砂に埋もれてしまうという、あっけなく虚しいエンディングが余韻を残す。