劇場公開日 2011年2月5日

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「淡々とした作品。子育て世代には、共感できるかも?」毎日かあさん 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5淡々とした作品。子育て世代には、共感できるかも?

2010年12月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 まずは、主役のサイバラがストーリーテーラーとなって進む展開が気に入りません。サイバラがしゃべりすぎ。語らずとも映像で分からせるのが映画の妙味ではないでしょうか。
 なんか雰囲気が似ていると思ったのが、同じ小泉今日子主演の『グーグーだって猫である(2008)』です。彼女には、何か出演作品を客観的に見つめる役割がお似合いと業界では思われているのでしょうかねぇ?

 作品自体は、ほぼ原作者の日常を綴られたものですが、毎日新聞朝刊の連載漫画のせいか、原作者ならではの毒々しさが押さえられて、『サザエさん』のようなコミカルなホームドラマとなっています。
 同様に原作者の実体験を元に綴られた、『パーラメント野ばら』(原作では『女の子ものがたり』)では、土佐女の「はちきん」と呼ばれる激しい気性と放送禁止下ネタ用語が飛び交うえぐい話でした。さすがに、その辺は押さえられています。
 たまたま現在公開中の、西原の夫が著した自伝的小説の映画化作品『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』と併せて見ると、原作者の一家に起こった出来事がより詳しく掴めるでしょう。

 前半で描かれるのは、過激にやんちゃな6歳の息子と甘えんぼの4歳の娘をかかえた主人公の子育て奮戦記。淡々と描かれつつも、描かれている子育ての中身は、なかなか刺激的です。まぁ~どろんこまみれは当たり前。加えて、6歳なのにお漏らしはするし、部屋中を散らかし放題だけでなく、食べ物は溢すわ、花瓶の水は倒して蒔き散らすわ、もう散々です。片時も目を放せません。子育てってこんなに大変なものなのか、感じさせてくれる前半でした。
 就寝時に絵本を読んであげないと絶対に寝てくれないのよというサイバラのボヤキには、共感を覚えてしまうヤングママさんも多いことでしょう。
 そして、おチビさんたちは、なかなか親泣かせなお節介者でした。サイバラがかつて東南アジアを旅したとき、虫を食べた話を聞いた子供たちは、河原でご近所同士がバーベキューを行っているときに、ミミズを大量に捕まえてきて、バーベキューの中に放り込み、親たちに喰え、と真顔で進めるのですねぇ、信じられません(^_^;)

 西原には、飲んだくれの夫がいたはずと思ったら、中盤にやっと登場します。夫が登場して、ほのぼのとしたホームドラマは、崩壊していきます。もうこのときにはアル中になっていて、一度妄想に取り憑かれたら、手がつけれないほどに、暴れ回るのです。その果てには、反吐を吐き、大量に喀血までしてしまうのでした。
 キレッぷりの演技の凄さは、凄いのひと言。演じている永瀬正敏の芝居の上手さが、目立っていました。

 写真家といっても仕事は少なく、プータローに近い夫は、意志も薄弱で、すぐに酒に手を出してしまいます。自分のダメさ加減にほとほと自信を失った夫は、自分から断酒施設への入院を決めます。それでも一向に良くならない夫に業を煮やしたサイバラは、離婚を申し出て、別れてしまうのです。
 でも幼い子供たちにとって、どんなダメ親でも、親は親です。父親に合いたい!そうだあれに乗って多摩川を降っていけば、きっとたどり着けるよと、兄妹が無謀にも使ったのは、おもちゃのプールでした。それを漕いで、父親に会いに行こうとするシーンは、子育て中の方なら、涙を誘われることでしょう。

 それともう一つ。何とかアル中を克服して、家族との最低限の交流を確保した元夫だったが、今度はガンが見つかって、やがて帰らぬ人に。ダメ夫とはいえ20年間を連れ添った人との別離に哀しむサイバラに、子供たちは必至にあっかんべえをするのです。母親を何とか元気づけたいと思う健気な子供たちの心にもうたれることでしょう。

 夫もいなくなったけれど、元からいないことが多かったサイバラの一家は、今日も淡々とした日々が続きます。なんだかんだあっても、私はひたすら漫画を描くだけというのが本作の言わんとするところでした。

 子供たちをのびのび育てるという、気は強いが、おおらかで存在感のある母親像を小泉が好演しています。淡々としている作品だけに、いま子育てにある方と、そうでない方とでは、大きく評価が別れそうな作品だと思います。
 家事に関心がない旦那に、いかに子育てが大変か分かってもらうには、ちょうどいいのかも知れませんね。子役のふたりも、演技が自然で素晴らしかったです。

流山の小地蔵