「とても美しいけど…」レオニー とんがりまめさんの映画レビュー(感想・評価)
とても美しいけど…
「大地を彫刻する」偉大な芸術家、イサムノグチ。
その人生は波乱に満ち、日本人でもアメリカ人でもないその境遇から数々の辛酸を舐め、同じように日本と中国のはざまで揺れた李香蘭さんと結婚していたことでも有名です。
しかし本作は彼ではなくその母が主人公。行き当たりばったりの無謀な女性ですが、前向き。そこが魅力でしょうか。
前半、運命に翻弄されるレオニー。様々な出会いと別れが丁寧に描かれます。孤独なイサム、不憫な妹の誕生…。
家族として当然いろんな葛藤があることでしょう。でもどこにも属すことの出来ない三人だから、戦友のような絆もまた同居するのでしょうか…。苦労する母の姿にひたすらな愛情を確信するのでしょうか。
ってその辺を、イサムの人格形成のベースとして描く…。のかと思いきや淡々としています。
時はたち戦争の影が家族に迫ります。日本にいては徴兵される可能性があるイサム。芸術を志しアメリカへ行きたいと言いだします。家族の大きな転機ですが、またこれが淡々と…。
イサムが行きたいならイサムの思いを、母が行かせたいなら母の思いを。語らせなくても表現してほしい。基本的に説明も足りず、どうとらえていいかがわかりません。
後半は大急ぎでした。ワンカットでは表現しきれるはずもなく…。
戦争のゴタゴタで音信不通になったイサムを引き取り医学校へ行かせてくれた恩人にレオニーが投げかける不躾な言葉には、がっかりします。苦労していろんな人に助けられて自身も成長してきたであろう母である女性が、いい年してあんな言い方?と思うのは私が日本人だからでしょうか。
子どもの才能を信じる一方で、人として大切なことに欠けているような…。彼女を主人公にして何を伝えたかったのでしょう…。
前半の心あたたまるエピソードの数々が、台無しになった瞬間なのでした。
厳しい意見で申し訳ありません。詩情豊かな美しい映画でしたが、あまりに絶賛のレビューが多いので、別の感想もありますということで投稿させていただきました。