「才能を見極める目。」レオニー ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
才能を見極める目。
世界的彫刻家イサム・ノグチの母、
レオニー・ギルモアの生涯を映画化した伝記ドラマ。
今作を観るまで彼女のことはまったく知らなかった^^;
昭和初期を生き抜いた強く逞しい女性であるのだが、
何しろ自我が強く、頑固で、他と横並びを嫌うという、
変わった性格の持ち主であるので、彼女の生き方に
共感できる点が必ずしも多いとはいえない。
実際の人物をリアルに描いた点では評価できる。
が、主人公に肩入れできない姿勢で観ることになると、
不憫に思えて仕方ないのが、その子供達なのである。
イサムの父は野口米次郎(ヨネ・ノグチ)であるのだが、
妹アイリスの父親は今もって誰なのかが分からない。
実際に判明しているのかどうなのかは分からないが、
本作では娘が言及するものの、レオニーは明かさない。
何か理由があるにせよ、子供にとっては疑惑千万。
母親の思惑に従って、単身渡米したイサムは終戦後、
迎えに来ない母親を待ってひとりで学校に寝泊まりし、
親切な学校長宅に身を寄せ、進学までさせてもらうが、
突然現れた母親がその校長に言い放った言葉は、
日本人には到底理解できない失礼至極な台詞である。
…とまぁ、他にも色々あるんだけど^^;
しかしどんなに人間的に欠落した部分があろうとも、
芸術家の才能を見抜く目は、あったということだろう。
わずか10歳のイサムに自宅の設計を任せてしまう。
潔いというか、やはり変わっているというか、とにかく
あぁやはりこの母にして、この子、なのだなと思う。
稀有な才能は、稀有な環境にして稀有な魂に宿った。
やはり芸術家の感性とは類まれなものだと感じる。
金銭面ではヨネの援助があったため、さほどの苦労は
なかったように感じる。むしろ当時の日本人の方が、
もっと貧困生活を強いられていた家族が大勢いたはず。
いわゆる「愛人」としての立場に甘んじざるを得なかった
母親の話だが、その反骨精神で見事に子供達を育て、
息子が世界的な作品を残す芸術家に育ったというのは
やはり彼女ありき。だったのだろうと思う。
共感できるできないはあれど^^;それが事実なのである。
(役者陣は申し分なし。獅童はこういう役、似合うわねぇ)