「見る人によっていろいろな見方ができそうな奥の深い映画」レオニー 温故知新さんの映画レビュー(感想・評価)
見る人によっていろいろな見方ができそうな奥の深い映画
クリックして本文を読む
世界的な彫刻家、イサム・ノグチ(1904~88年)の母、レオニー・ギルモアの伝記映画。
子供の才能を伸ばすために、子供の生きる場を次々変えていくのをみると「孟母三遷」のようなしっかりした教育観を持った母親を描いた映画とも言える。医者の道を志そうとする息子に、あなたは芸術家になるべきだと諭す。母親は強い、と思った。
イサム・ノグチの父、ヨネ・ノグチが男女の関係において当時の古い日本的価値観を引きずっていたのに対し、レオニーは現代的な男女関係を体現しようとしており、そのギャップも面白かった。正妻がいながら自分を養おうとするヨネに対し「私は犬ではない」ときっぱり断る。しかし、別れた後も、仕事のパートナーとしては常に夫を尊敬していたし、その血を受け継いだイサム・ノグチが芸術家を目指すべきと思うのも、ヨネを尊敬していたからだろう。ヨネが迫る従属的な男女関係にだけは従えないというレオニーだった。
二つの文化の境にいる子供はどちらの文化も享受する半面、どちらの文化からも拒絶される。境界にいる子供の強さを引き出し、日本的価値観やアメリカ的価値観のどちらにも染まらないようにイサム・ノグチを育てたレオニーは、確かに彫刻家、イサム・ノグチの生みの親でもあるのだろう。
これがノンフィクション映画であれば、巨匠になった後のイサム・ノグチに、母親への思いを語ってもらいたかった。
コメントする