「どの台詞も詩的」レオニー マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
どの台詞も詩的
非凡な才能を持ちながら、当時、西洋でさえも異端児扱いされた女性レオニー。日本に渡って5年経っても英語で押し通す、それはあくまでも自分らしく生きる信念の現れだったのかもしれない。
天才芸術家イサム・ノグチの母でありながら、夫・米次郎のように有名でもなければ文献も少ないレオニー・ギルモアに着目した点は面白い。
当時の日本の情景が美しく、行き交う人々や、流れる空気さえ匂うようなディテールは日本人だからこそ描けるもの。ハリウッド主導で撮ったら、どこの国か判らなくなってしまうところだ。また、どの台詞も詩的で、松井久子監督自身が芸術肌であろうことが容易に推察できる。
ただ、小説や大河ドラマならともかく、2時間そこそこの映画枠に於いて、ひとりの人生を描き切るというのは容易ではない。前半はしっかりした構成でレオニーの20~30代を追うが、後半が駆け足になってしまってイサムの才能を引き出す過程も曖昧だ。伝記物だからといって必ずしも亡くなるまでを描く必要はないと思う。言葉も文化も異なる日本で、母ひとり子ひとりがどう生きたのか、そこの年代に絞って、重点的に描く手法を取れなかったものか? ましてや、札幌の作品も紹介したいと欲張ってしまうと、焦点がボケてしまう。
作者のレオニーやイサムに対するほとばしる愛情は伝わってくるのだが、一歩引いた客観的な眼を失ってはならない。
敢えて切る、勇気もいるが大胆にもなれる、そこがまさに映画作りの醍醐味だと思うのだが・・・。
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