「ガツンと来る久々に映画らしい映画」レオニー shiorinさんの映画レビュー(感想・評価)
ガツンと来る久々に映画らしい映画
映像が美しい。
ややアンダーがかった印象的な照明は名人と呼ばれる佐野武治によるもので、その光と影から生まれるどこか懐かしいような格調高い独特の映像美は、フランス映画「エディット・ピアフ」でセザール賞撮影賞を受賞した永田鉄男ならではのたゆたうようなあえかな世界。
この永田カラーにしばらく浸ってしまうと、他の映画がみんなビカビカ下品に見えてしまうのが難点だが。
そこに、「ネバーランド」でアカデミー賞作曲賞を受賞したヤン・A.P.カチュマレクのドラマティックでありながら大仰にならない哀愁漂う音楽が絡み、一瞬で惹きこまれる。
さらに、時代考証にぴったり沿った衣装が織り成す空気感のリアルさ。
洋装は「カラー・パープル」でやはりオスカーをとったアギー・ロジャース、和装は黒澤和子。すごいはずだ。衣装が生きているから登場人物も生ききっている。
そんなスタッフを束ねているまだ無冠の松井久子監督という人に驚く。
英国詩人キーツの詩の韻と恋人が縫うフリルが響き合うことを示唆するシーンが登場する「ブライト・スター」を撮ったジェーン・カンピオン監督の繊細さ、芸術性に勝るとも劣らない。
「レオニー」を撮った松井久子監督は彼女に匹敵すると思う。
この主人公の心の動きを追えばあまりにせつない。
しかし、人間が潔さを選択できる可能性を示したことに救われる。
日本の四季が美しい。
日本人であることに誇りを感じたくなる。
脱亜入欧以来、日本の文人たちがずっと問い続けてきてまだ見つからない答えがここにある。私たちにとってこの映画は世界的文化遺産となるだろう。
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