「無邪気な残酷祭り」ソウ ザ・ファイナル 3D ダックス奮闘{ふんとう}さんの映画レビュー(感想・評価)
無邪気な残酷祭り
ケビン・グルタート監督が描く、人気シチュエーション・スリラーシリーズの第七弾にして、堂々の完結篇。
ここまで、観客を置いてきぼりにして突っ走る作品も珍しい。シリーズ第七弾というある程度の認知度とコアな人気を意識できる環境にありながら、守りに走る事無く、最期まで作り手の無邪気な欲望を満たすための道具として作品をこねくり回しているような、薄気味悪さが充満している。
「どうやって、派手に、陰湿に血を流してやろうか」
この一点のテーマにのみ焦点を合わせ、別にそこまで鮮血を撒き散らさなくても事足りる暴力描写でも、無理やりに刃傷沙汰としてこじつける。ある意味、この作り手の純粋な殺戮場面作りへの野蛮な姿勢こそが、スリラーとしての成功を影で支えている。
このシリーズの撮影現場におけるスタッフの嬉々とした創作風景を追いかけた方が、よほど不気味なホラーとして成功しそうだ。それだけ、この物語がもつ衝動や、殺意は他の類似作と比較しても群を抜いている。
もちろん、核となる復讐と、後継、悲哀の描写もきちんと描かれているが、ご存知の通り、スタッフの興味はもうそこにはないように思える。どれだけ、この陰湿な残酷祭りを続けられるか、その為に取りあえず話を延ばしているという自覚すら垣間見える。いやらしい。だが、その息苦しいイベントに観客は惹かれ、付いてきた。手を変え品を変え引っ張り続けた展開もまた、手放しに賛美したい努力の結晶だ。
ようやく終止符が打たれた血みどろ感謝祭だが、この作品が映画界に植えつけた「凄惨な血への興味、欲望」は消えない。むしろ、観客の心で静かに繁殖していくだろう。新しいホラーの可能性をこじ開けた記念碑的作品として認知されることは、免れない。喜ばしいのか・・それとも?謎は尽きない。