「8ミリフイルムが良い」SUPER 8 スーパーエイト DOGLOVER AKIKOさんの映画レビュー(感想・評価)
8ミリフイルムが良い
映画「グーニーズ」みたいな少年達が 「ET」みたいな出会いをして、「スタンバイミー」みたいに成長する映画だ、、、と宣伝されたら、観ずにいられないだろう。行って観てきたが、残念ながら 「グーニーズ」の興奮、「ET」の感動、「スタンバイミー」の共感を期待していると、そのどれにも裏切られる。強いて言えばトム クルーズの「宇宙戦争」が好きな人には 見る価値があるかもしれない。
題名の「スーパーエイト」は、スーパー8ミリのカメラのこと。
1979年、夏、オハイオ州の小さな街。
ジョーは 母親を交通事故で亡くす。兄弟なない。父親は町の警察官だ。多忙を極める父親を見てきた街の人々は 一人残されたジョーを心配する。ジョーは母親が死ぬまで身に着けていた 息子を抱く自分の写真の入ったペンダントをいつもポケットに忍ばせている。
夏休み。ジョーと4人の仲間は 8ミリカメラで映画を作っている。太っちょのチャールス、カーレイ、マーテイン、プレストンだ。伊達男の私立探偵が ある事件を追っているうちに 犯人がゾンビであることを突き止めるという恐怖映画だ。探偵の愛人役に、アリスに頼んで出演してもらうことになった。ジョーもチャールスもアリスのことが とても好きだ。
撮影場所は駅舎。
アリスを含む6人は、深夜 家を抜け出して駅で映画撮影を始める。そこを列車が通過する。 すると、列車の進む方向から トラックがやってきて列車に衝突し、列車はことごとく脱線して燃え上がる。少年達は命からがら 逃げ回るが、駅に置き忘れてきたカメラのフイルムは 回り続ける。6人の子供たちは列車に衝突したトラックと それに乗った男を見つける。それは、半死状態の学校の生物の先生、ドクターウッドワードだった。驚くことに、先生はまだ生きていて、ジョーたちに「今見た事を誰にも言ってはならない。軍が来て お前達を見つけたら殺すだろう。早く逃げろ。」と言って銃でジョーたちを脅かす。6人は恐怖に駆られて現場から遁走する。そうしている間にも 何百という軍人を乗せたトラックが どこからともなく集結していて、周辺が封鎖された。
ジョーたちは翌日 顔をあわせても あったことについて口を閉じていた。街は軍人達であふれている。彼らは事故の処理で忙しい。街の警察官のジョーの父親は、軍に協力を申し出るが 相手は断り そっけない。
この日を境に、街中の犬が居なくなり、車のバッテリーは盗まれ、電線が断ち切られ、停電ばかりするようになった。不思議なことばかり起きて、一人、また一人と、住民が消えて居なくなる。
ジョーとチャックは 現像した8ミリカメラのフイルムを観ていて、そこに横転した列車から何か、異様な生き物が出てくるシーンを目撃して、衝撃を受ける。
軍は 次々と転覆した列車事故の跡に、火を放ち 何かの証拠を消すかのようだ。ついに住民は 避難するように命令され 人々は着の身着のままバスに乗せられる。
アリスが父親の目の前で 何物かに連れ去られた。その何物かを目撃したアリスの父親の言葉に ジョーは誰がアリスを誘拐したのか 確信して 彼女を助け出す決意をする。ジョーと4人の仲間は学校に忍び入り 列車転覆事故の原因になったドクターウッドワードの研究室を調べる。そし列車から逃げ出した正体が、、、
という お話。
監督:JJエイブラムス
製作:ステーブン スピルバーグ
キャスト
ジョー :ジョエル コートニー
ジョーの父:カイル チャンドラー
アリス :エル ファニング
アリスの父:ロン エルダート
チャールス:ライリー グリフィス
カーレイ :ライアン リー
1979年オハイオ州で実際にあったコンレール社の貨物列車脱線事故で、このときの事故処理が 秘密裏に行われ、処理に200万ドル以上の空前の費用が投入された。スリーマイル島原子力事故に、時期的にも近いし、列車で何が運ばれていたのか 人々には知らされなかった。またネバダ州のエリア51が閉鎖され、人々の立ち入りが禁じられたが その理由が全く明らかにされていない。など数々のクエスチョンマークが この映画制作の切っ掛けになったようだ。
ステーブン スピルバーグを尊敬していて とても思い入れのある監督JJエイブラムスが監督した映画だが、気色の悪さで 彼のB級作品「アルマゲドン」を思い出してしまった。エイリアンも「宇宙戦争」、「トランスフォーマー」や、「ロードオブザリング」などでおなじみの姿で、「やあやあ、またお会いしましたね。」という感じ。
印象に残った場面も無くはない。
ジョーが、犬が居なくなったので 犬の写真を貼った紙を街の掲示板に貼り付けに行く。初めカメラがジョーの犬をフォーカスしている。フォーカスが解かれ、画面が序序に大きくなり、ジョーが犬を失くしたのが自分だけではないと気がついて 後ずさりすると掲示板いっぱいに 様々な犬の写真が 何百と掲示板にひしめいている。カメラのレンズが拡大するに従って ジョーの恐怖感が増大するシーンだ。カメラワークがうまい。
最後のエンデイングの音楽とともに映る 子供たちが製作した8ミリ映画が秀逸だ。
これが とても愉快でよくできている。映画そのものよりも、こっちの方が良い。
「グーニーズ」は1985年作品。リチャード ドナー監督。女の子一人を含む6人の子供たちが 仲間のマイキーの家が 銀行の借金で立ち退きになる為 それを阻止するために海賊の隠した財宝を探しに洞窟探検するお話。喘息で吸入器が離せないマイキー、メキシコ人のマウス、虚言癖のある太っちょチャンク、中国系で発明家のデータ マイキーの兄とその恋人アンデイー、、どの子も目の前に居る実際の子供のように鮮やかに描かれていて楽しい。
「ET」は 1982年作品。 地球に探索にきて 一人置き去りにされてしまったエイリアンとエリオット少年とその仲間の 心の交流の物語。
「スタンバイミー」は 1986年 ステーブン キング監督。12歳の少年4人が 死体探しの冒険の旅に出るお話。
コーデイには優秀な兄がいて、家庭に自分の居場所がない。その兄が事故で死んでしまったとき、親は「お前が死ねばよかったのに。」と言われて傷つく。4人とも 心に傷を持っていて けなげに現実に向き合っている。それぞれが実に生き生きしていて、忘れられない名作だ。
「グーニーズ」と「ET」と「スタンバイミー」をあわせたような 本当に心がふるえるような 子供たちの映画があったら、素敵だ。