「家族の繋がり。」ふたたび swing me again ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
家族の繋がり。
ハンセン病とジャズとロードムービーという異色の要素が
絡み合った珍しい作品だが、観て損はない作品である。
ハンセン病の実態すらよく分かっていない私に講じられる
ことはなく、財津一郎の顔が綺麗すぎるのにも気付かない。
だが健康だろうと家族の繋がりがどんどん薄れている昨今、
祖父の存在を誇りに思い、願いを叶えるために奔走する孫
を見て、胸が掬われる思いがしたのは私だけじゃないはず。
だって、他人ではない、家族なのだ。
どうして今まで隔離されて死んだことにされていたのか…。
悲しい過去とこれからの未来(ささやかながら)に、ふたたび
夢を馳せたっていいじゃないか。そんな応援モードにもなる。
その病とは別に、彼らの旅はバンドを再結成する(夢)という
不可能であろうと、果たさなければならない使命を帯びた旅、
遠い昔に自分の病によって迷惑をかけたバンドのメンバーに
逢って謝りたい、もう一度語り逢いたい、ただそれだけの、
本当にささやかながら力強い決意の旅でもある。
なので映画の進行具合も、とても自然でささやかで鈍い(爆)
孫とケンカしながらの道中語らいも面白く、自分のやりたい
ことを推し通す頑固ジジイと、やりたいことがやれているから
我慢を知らない今の若者との対比に笑える。健康で、自由で、
ヘタだろうと(爆)何だろうと^^;好きなことに関わっていられる
毎日っていうのは、本当に人生の何ものにも代えがたい。
生きていられるだけでも確かに喜ばしいことだが、生きて更に
自由を謳歌できることが、どれほど贅沢で素晴らしいことか。
こういう作品を観ると、幾つも幾つも反省させられる…^^;
だから本当に、たまには観せてほしいのだ。こんな作品を。
とはいえ、バンドの再結成などそんな生易しいものではないし、
後半の展開には(夢が先行しすぎて)首をかしげる場面もある。
どこを観ていくかで、感想が変わってくる作品かもしれない。
演奏シーンの吹き替えも惜しまれるが、ナベサダのサックス
の素晴らしさに、また胸が掬われる。楽しんで、自ら楽しんで、
「好き」が演じられることにまた、歓びが感じられるのである。
(心に余裕があると優しくなれる。余裕は満足から生まれる。)