ステキな金縛りのレビュー・感想・評価
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三谷作品の不幸な敷居
観ている間の退屈は皆無ですが、観終えると「あの登場人物、エピソードは必要だったのか?」という疑問がぼんやりと浮かんできました。例えば、主人公の同居人。ドラマ撮影の見学。オールスターキャストとなると、ばっさりカットも難しいのでしょうか…。(大泉洋は、エンドロールで写真のみ出演でしたが。)
三谷作品は好きです。それなのに公開から数か月後にやっと観るに至った要因は、何より上映時間の長さでした。郊外のシネコンへの往復時間プラス上映時間の二時間半(東宝作品の予告もたっぷりつきました。)…となると、育児中の身ではなかなか容易に足を運べません。(子ども連れOK上映会に採用していたシネコンもありましたが、二時間越えの映画で子どもを「持たせる」のは難しいかと。)そんな物理的要因で敷居が高くなるのは、三谷作品にとって不幸なことだと思います。私見ですが、三谷作品を楽しむのは、歌舞伎やオペラを楽しむ感覚とは異なるはずです。
さらに言うと、私が大スクリーンで観たい三谷作品は「ばらばらな人々が、いつの間にか一つの方向に進み繋がっていく」物語です。主人公と相棒がくっきりと軸となる物語は、どちらかと言うとテレビドラマ向きで、本作は後者のように思われました。浅野忠信や阿部寛が演じた役柄に、もっと絡んでほしかったです。
…でもやっぱり、三谷作品は好きです。次も楽しみにしています。
【81.9】ステキな金縛り 映画レビュー
映画『ステキな金縛り』(2011) 批評
作品の完成度
三谷幸喜監督が長年温めてきたという構想を、コメディ、ファンタジー、法廷劇という複数のジャンルを巧みに融合させたエンターテインメント作品。荒唐無稽な「幽霊が証人になる」という設定を軸に、法廷という舞台で起こるユーモラスな出来事をテンポよく描き出している。全体を貫くのは、「目に見えないものを信じること」という普遍的なテーマであり、観客に笑いと感動の両方をもたらすよう構成されている。ただし、キャラクターの多さやストーリーの複雑さが、一部で冗長に感じられるという意見も散見される。観客を飽きさせない工夫として、随所にちりばめられた小ネタや、豪華キャストによるカメオ出演など、ファンサービスも手厚い。長編としてのまとまりはありつつも、もう少し物語を絞り込むことで、より洗練された作品になった可能性も感じられる。
監督・演出・編集
監督・脚本は三谷幸喜。彼特有の舞台劇的な演出が随所にみられる。セリフの間合い、役者の動き、そして観客を笑わせるための絶妙なタイミングは、まさに舞台のそれ。特に、幽霊である更科六兵衛が法廷に現れるシーンでは、彼が見える人と見えない人のリアクションの違いをコミカルに描き出し、視覚的な面白さを生み出している。複数の登場人物の会話が同時に進行する三谷作品ならではの演出も健在。編集については、物語の進行に合わせてテンポよくシーンが切り替わるものの、全体の上映時間が142分と長尺であるため、後半にやや間延びを感じさせる部分があることも否めない。しかし、法廷劇としての緊張感とコメディとしての軽快さのバランスを保ち、観客の感情を巧みに揺さぶる演出は秀逸である。
キャスティング・役者の演技
三谷幸喜作品の真骨頂とも言える豪華キャストが勢揃い。それぞれの役者が自身の個性を生かしながら、キャラクターに命を吹き込んでいる。
・主演:深津絵里(宝生エミ)
失敗続きで人生のどん底にいる三流弁護士を、等身大のキャラクターとして魅力的に演じている。幽霊の存在を信じ、真実を追い求めるひたむきな姿は、観客の共感を呼ぶ。コミカルな芝居から、法廷での真剣な表情まで、幅広い感情表現を自然にこなし、物語の中心として確固たる存在感を放つ。特に、唯一の理解者である六兵衛との間に築かれる友情は、彼女の繊細な演技によって深く心に響くものとなっている。彼女の演技が、ファンタジーという荒唐無稽な設定にリアリティを与えていると言っても過言ではない。
・主演:西田敏行(更科六兵衛)
落ち武者の幽霊という非現実的な役柄を、圧倒的な存在感と愛らしさで演じ切っている。見た目の威圧感とは裏腹に、世間知らずで純粋な心を持つ六兵衛のギャップを巧みに表現。時にコミカルな表情や仕草で笑いを誘い、時に421年間の孤独を感じさせる切ない眼差しを見せる。深津絵里とのユーモラスで温かい掛け合いは、本作の最大の魅力の一つであり、彼でなければ成立し得なかった唯一無二のキャラクターと言える。第35回日本アカデミー賞では優秀主演男優賞を受賞するなど、高い評価を得た。
・助演:阿部寛(速水悠)
エミが所属する法律事務所のボス。一見頼りないが、実はエミを陰ながら支える心優しい人物。軽妙な語り口と飄々とした佇まいで、作品に独特のリズム感を与えている。彼が登場するたびに、物語の空気が一気に和らぎ、観客を笑顔にさせる。彼の存在が、エミの奮闘をより魅力的に引き立てる重要な役割を担っている。
・助演:竹内結子(矢部鈴子)
資産家の妻を殺害したとされる被告人の妻。夫の無実を信じ、エミに弁護を依頼する。夫を深く愛する健気な女性を、細やかな表情の変化で表現。後半の展開における重要な伏線を担う役柄であり、物語にミステリー要素を加える。彼女の演技は、法廷劇としての真剣さを作品にもたらす上で不可欠な要素。
・助演:中井貴一(小佐野徹)
六兵衛の証言を信じない敏腕検事。超常現象を一切認めない堅物で、法廷ではエミと対峙する。厳格で真面目なキャラクターを、顔の筋肉まで使ったコミカルな演技で表現。彼のリアクションが、六兵衛の存在を際立たせ、法廷でのやり取りをよりユーモラスなものにしている。彼の登場は、物語に緊張感と同時に、三谷作品らしいユーモアをもたらす。
脚本・ストーリー
「幽霊が証人になる法廷劇」という斬新なアイデアが、物語の核。事件の真相を解明していくミステリー要素と、エミと六兵衛の友情を描くヒューマンドラマが見事に調和している。単なるコメディに終わらず、「真実とは何か」「目に見えないものを信じることの尊さ」という深遠なテーマを提起。しかし、登場人物が多岐にわたり、物語の展開が複雑になりがちなため、若干の混乱を招く可能性も。全体としては、笑いと涙をバランスよく配置し、観客を飽きさせない構成となっている。第35回日本アカデミー賞では最優秀脚本賞を受賞。
映像・美術衣装
法廷のセットは、重厚感のある洋館風のデザインで統一され、非現実的な物語に説得力を与えている。落ち武者の幽霊である六兵衛の衣装は、時代劇的な雰囲気を醸し出しつつも、現代の法廷という場に違和感なく溶け込むよう工夫されている。美術や小道具の細部にまでこだわりが感じられ、三谷作品らしいユニークな世界観を構築。照明や撮影技術も、コミカルなシーンでは明るく、シリアスなシーンでは落ち着いたトーンで、物語の雰囲気を効果的に演出している。
音楽
荻野清子が手掛ける音楽は、作品の持つコミカルかつ温かい雰囲気を盛り上げる。特に印象的なのは、法廷のシーンで流れるクラシック音楽風のメロディ。緊張感と滑稽さの入り混じった独特の空気感を演出している。主題歌は、主演の深津絵里と西田敏行がデュエットした「ONCE IN A BLUE MOON」。物語の世界観を表現する歌詞と、二人の温かい歌声が、エンディングを感動的に締めくくる。
受賞歴
第35回日本アカデミー賞
最優秀脚本賞:三谷幸喜
優秀主演男優賞:西田敏行
優秀主演女優賞:深津絵里
第54回ブルーリボン賞
主演男優賞:西田敏行
作品
監督 三谷幸喜
114.5×0.715 81.9
編集
主演 深津絵里A9×2
助演 西田敏行 S10×2
脚本・ストーリー 三谷幸喜
B+7.5×7
撮影・映像 山本英夫 B8
美術・衣装 種田陽平 B8
音楽 荻野清子 B8
西田敏行劇場
やっぱり
亡き中村靖日さん
そうだ、三谷幸喜を観よう。豪華キャストを湯水の如く使った贅沢な作品。そして裁判所の紙の件。
面白そうな邦画をアマプラで探していて。
きっと観ていたはずの『ラヂオの時間』を見かけたんですが。例によってレビューは書いていないので、もう一度鑑賞をとも思ったのですが。ちょっと変わったことをやりたい気分になって。
三谷監督作品で、他に面白そうな作品はないかなー?と思って調べてみると、ほんっとに豪華キャストオンパレードのこちらの作品に行き当たりました。文世さんも、佐藤浩市も、阿部寛もご出演ですし。幕の内弁当かよ。
三谷監督の法廷物といえば、大好きだったテレビドラマ『合言葉は勇気』が私史上最高級評価でしたので、大いに期待が高まるわけです。
キャストの予習のみの、そんな行き当たりばったりでの鑑賞スタートです。300円課金したから、48時間以内に集中して楽しまなきゃ。
オープニングクレジットの最後に出てきた「Once in a blue moon」の意味がわからなくて。調べてみました。英語さっぱりなので勉強しなきゃ。
「ごくまれに」「めったにない」という意味なのですね。新鮮な学びの喜びナイス。ひとつ賢くなりました。忘れずに覚えていられたらですけれど。
悪い癖です。お話について語るのがレビューですよね。
まず、ノーメイクすっぴんフェイスの深津絵里が、私的萌え琴線に触れました。生活に疲れきったような幸薄い系の顔立ちが好みなので。加えて黒スーツ姿でしょ。これ完全に触れまくっています。←なにそのピンポイントな性癖w そして深津さん、なにげに失礼なこと申し上げてごめんなさい。
お話について語るのがレビューでしたよね。←2回目
阿部寛、中井貴一ご両名登場で、画面が一気に引き締まりました。
予習として、Wikipediaを覗いたんですが、前述の通りキャストの豪華なこと豪華なこと!佐藤浩市を始めとして、錚々たる面々のオンパレード。どこを切っても主役級の金太郎飴状態。ってなことを思っていたんですよね。
ところがどっこいでした。その佐藤浩市も、物語の本筋には全く絡まないモブキャラ扱い。
大泉洋に至っては、役名もなく“勝訴を持つ男”役で、勝訴の紙(ここ、あとでたっぷり語ります)に顔が半分隠れた状態でのご出演だもの。完全にエキストラ状態。 豪華すぎるキャストを湯水の如く消費しきった「Once in a blue moon」な映画です。
落ち武者の亡霊を演ずる西田敏行は、幽霊にしては濃すぎるキャラクターでミスキャストかと思っていました。最初は。
むしろパパ役を演じた草彅剛くらいに線が細い青白フェイスの方が幽霊顔に似合っていると思ったりしました。←草彅さんも失礼申し上げてすみません。
ですが物語が進むにつれ 、西田さん独特のコミカルなキャラクターがぴったりとハマっていたように思い直しました。
幽霊が【見える】【見えない】の間で繰り広げられる、三谷ワールド全開の、オーバーアクション・ドタバタコメディーが、大変面白かったです。特に中井貴一のキャラが立っていました。
三谷作品ということで、鑑賞前は、ワンシチュエーションの法廷劇かと早合点していたのですが、よい意味で裏切られました。
残念に思ったことは、最終弁論のシーンで、幽霊こと西田敏行は現れず、お話に絡んでこなかったことかな。
ここはまぁ主人公の成長劇がテーマのようなので、切り札(幽霊)をあえて省くことで、それを効果的に描きたかった故のことなのかな?と思いました。
そして触れますよ。エンドロールのワンカットのみのスチールでご登場の大泉洋の持つ「勝訴」の紙について。
私、あの紙って裁判所の売店で売られているものだと信じてるんですよね、ずっと以前から。
と言うのも、裁判でまさか「不当判決」の紙は縁起でもなくて、そんな物を用意して来るはずなんてないと思っていて。
なので裁判所には、きっと売店があるはずなんですよ。
そこで判決に合わせた紙を買ってるんですよ。
「勝訴」の方がご祝儀感覚でお値段高いの。そして高名な書道家の書いた紙は家宝級なので、かなりのプレミア価格なの。
傍聴人も休廷の間はお腹だって空くだろうに。お茶で幕の内弁当くらいは食べたくなると思うじゃないですか。焼きそばパンでもいいし。
あるよね絶対に!裁判所には売店が!←なにその決め打ち
三谷作品でベスト
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弁護士の深津が妻殺しの容疑をかけられた者の弁護をしていた。
その人にはホテルの一室で金縛りになっていたというアリバイがあった。
しかしそんなものは法廷では認められない。
深津はそのホテルへ行き、落ち武者の霊である西田と出会う。
そしてアリバイ証明のため法廷にて証言台に立ってもらう。
そもそも一部の人間にしか見えないのだが、検事の中井にも見えた。
裁判官も正式に証人として認めた。
しかしこの落ち武者は歴史的には濡れ衣で裏切り者とされていた。
なので証言は信用できないと中井が主張し、深津は不利となる。
しかしこの濡れ衣を子孫が晴らすことにより、持ち直した。
西田はこの世の未練が晴れた事で成仏でき、去った。
その後深津はある事に気付いた。
西田は死後の世界から死人を連れて来る事ができるので、
容疑者の妻を連れて来てもらおうとした。が、見つからなかった。
って事は妻はまだ生きてるのではないか?
その予想は正しく、妻はそっくりな姉を殺してすり変わったのだった。
深津は霊界の偉いさんに法廷に姉の霊を呼び出してもらった。
姉は妹が犯人と明言、中井もさすがに白旗を挙げ勝訴、解決。
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三谷作品はあんまり好きではないんやが、
この作品はとてもおもしろかったわ。おれの中ではベスト。
今まで深津をかわいいと思った事ってあんまり無いんやが、
天真爛漫な感じの主人公を好演してて魅力的だった。
全体に屋内のシーンばかりで画面が暗いのと、アップが少ないのとで、
20歳代の役にしか見えんくてかわいかった。
検事役の中井も相変わらず安定した演技が光ってた。
弁護士と検事は敵同士ではなく、事実を明確にするという意味では、
それは味方なのだというセリフは良かったなあ。
あと相変わらず物理にうるさいおれなんで一応突っ込むが、
霊は物質に触れられないのに、息のみ有効で笛は吹けるってのは変。
まあそもそも喜劇なんでそこは別にええねんけど。
あと阿部が死ぬ時のセリフ、天一のラーメンもう1回食いたかった、
ってのも秀逸。ってかこれ実は広告で宣伝費もらってたりして(場)
大泉洋さん、アレだけでいいんですか!?
最後のエンドロール「勝訴」の紙を持つ男の人が大泉洋さんだったという。しかも出演はそれだけ(!?)で勝訴の紙にお顔が半分隠れているという…とんでもないカメオ出演、ご馳走様です!!
(いやはや、粒ぞろいの役者さんばかりで!! は〜…贅沢なコース料理を心ゆくまでいただいたかのような気分に浸れました…! ありがとうございます)
難解な事件を前代未聞の解決策で乗り越える中で、人が成長していく様を描いているステキな映画です。
難解な事件を解決する中で、
人として大きく成長していくHUMAN STORYを描いています。
三谷幸喜作品らしく、
ユーモアも満載、でも、感動するシーンがたくさんあるので、見応えがあります。
ちなみに、三谷幸喜監督の
「ザ・マジックアワー」を見たあとに、この映画を観る方が、本作品を楽しめると思います。
・子供→大人
・三流→一流
etc.
何かしら成長するためには、今の自分から卒業する必要があります。
つまり、「卒業」には、「別れ」がつきものです。
本作品でも、次のステージに行くために、いろいろと手放していく場面も描かれています。
ちょっとした切ない部分もありますが、全体的に温かさを感じるようなステキな映画です。
裁判は勝ち負けではないからね。壁に耳あり障子に目ありな映画
内容は、若くして弁護士の父親を亡くした自信の無い駄目弁護士の娘北条と無実の罪で打首にされた落武者更科六兵衛が、同じ無実の罪に向き合う矢部五郎を弁護し自信を取り戻すまでの法廷内ドタバタコメディ。好きな言葉は『ごめんなさい』『もっと早くその言葉が聞きたかった…』裁判の行き詰まりから家庭内不和に発展して感情にまかした言葉で相手を傷付け謝罪する場面。そして落武者に『自信が足らぬ。自分を信じずして誰が信じられるか?!』と言われ一度も聞こえなかった父の声を最後には法廷内で聞き同棲相手ともよりを戻せ自分に自信を取り戻す時には、もう六兵衛の姿は見えずこれからの未来に向かうエンドロールは元気をいただきました。死のメタファーとしての落武者は必要無くなりそれでも守護霊として父と共に見守ってくれてる『1人ぢゃない!』と自信を持って発言してする姿は伝えたかった事の一つなんだろうなぁと感じました。好きなシーンはエンドロールの最後に肖像画更科六兵衛が笑って無念を晴らせた所でも成仏はしないと写真に映り込む場面で非常に強い優しさと主従関係が結ばれていてホッコリしました。感じた事はやはり死んだ被害者から証言を得られればどんなに冤罪や間違いや無念が氷解することが出来ると思うとたらればながら面白さを感じました。
三谷ワールド初体験
随所に笑いが散りばめられた、三谷さんの名作
終始シュールなコメディ喜劇
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