「あたたかい、それだけなのに」おまえうまそうだな pearlboyfriendさんの映画レビュー(感想・評価)
あたたかい、それだけなのに
僕がハートとウマソウに出逢ったのはとあるレンタル店だった。「笑って、泣いて、心温まるお話です」・・・そう紹介されていたパッケージの前をふと通りかかった僕だが、絵が子供向けのアニメっぽい。こんなんで心のどこがあったまるんや、と半信半疑で、少しナメていた。が、しこたま不意打ちを食らうことになってしまった(笑)
僕は、この物語は二つの捉え方ができるんじゃないかと思っている。子供が観たときと、大人が観たときとでは大きく物語が違うのではないだろうか。
草食恐竜のおかあさん。オオアゴの卵を拾っちゃって大変だったね。捨てようと思ってもどうしてもできなくて、結局群れを外れずるをえなくて、結果としてハートを失ってしまったんだから。
だけど、おかあさんは、もしかしたらハートが近い将来いなくなってしまうのではないかと心配していたのかもしれない、いやむしろ、自分やライトが食べられてしまうことさえ覚悟していたのかもしれない。作品中ではハートがいなくなってからのことは描かれていない。おかあさんの悲しみはどれほどのものだったんだろう。ああ、やっぱり行ってしまったのね、とあきらめがつくものなのか。いや、そもそもあんな卵を拾って育ててしまった自分がいけなかったのか。そしてその悲しみをおかあさんは一人で、自分の中で抱えなければと考えていたのではないだろうか。実はハートはオオアゴの子供だったのよ、だからもうあの子とはお別れね、なんてライトには言えないだろうし。辛かっただろうな、おかあさん。
ハートもそんなおかあさんに育てられたからこそ、ウマソウを育てることができたのだと思う。確かに外見はオオアゴだ。だが心のどこかに、子供の頃に母親から愛情を一身に受けた記憶が、ウマソウを食べるかどうかのきわどいところで仕事をしたのだろうか。こうして、子供だったハートもいつしか親になっていくんだなぁ、と思いながら観ていた。確かに子供は親の手助け無しでは生きてゆけない。だが将来自分が親になったとき、いや、子供をまっとうな親にならしめるものは、はやり小さいときに受けた愛情なんだろうな。
そういう思いがいっしょになって、後半は本当に泣けた。おかあさんの悲しみ、ウマソウへのハートの愛情、ライトの葛藤を思えば思うほど胸が揺り動かされる。
奇跡なんて起こらない。ハートが草食になったりは決してないのだが、観終わった後には言いようのない満足感と、ほのかな胸のあたたかみが残った。
ああ、自分って、こんなに泣けるもんなんだってくらい泣いた。
素直に泣ける、これってすごく重要なことだと思うし、これからも忘てはいけない大切なことを、ハートは、ウマソウは教えてくれた。
ありがとう。