「親の在り方で子は育つ。」おまえうまそうだな ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
親の在り方で子は育つ。
原作の絵本シリーズは(またもや)まったく知らなかった。
劇場予告で観た時もそれほど惹かれるものがなかった。
ところが、観始めてすぐに胸がつまりはじめ、、後半では
半べそ状態。そして無性に息子に逢いたくなってしまった^^;
いい話である。画にもストーリーにもこれといった特異性は
なにもないのに、ものすごく訴えかけてくるものがある。
かな~り昔に、「まんが日本昔話」なるアニメがあったが、
あのテイストを生かしつつ、軽快な音楽と、今風にドライな
感性を持ち合わせた展開に、いつの世も変わることのない
家族愛をふんだんに織り込んだ物語である。文化庁とかが
大推薦しそうな子供教育に適した話でもあるが、それより
「こういうのを観たかったんだよ」と思うお父さんお母さんに
大絶賛される物語であるに違いない。自分が生まれてから、
今までどれだけの愛と恩恵を受けてきたか考えさせられる。
物語はいたって単純である。
草食恐竜のお母さんがある日、流されてきた卵を拾う。
自分の卵と一緒に温めて孵したところ、それは自分達を
やがて食べるであろう肉食恐竜の赤ちゃんであった。
当然仲間から猛反発を食らい、遠くへ捨てに行くのだが、
自分を追って泣く子供の声に逆らえず、育てることに…。
仲間からは離れ、自身の子供と兄弟として育て始めるが、
食べる物の好みが違くなってくる。ある日森を出て平原に
出た肉食恐竜・ハートは群れに出逢い肉の美味しさを知る。
かくしてハートは、母と兄・ライトの元を去っていく…。
時は流れ、群れの無法者として名を馳せるハートの前に
草食恐竜の卵が転がり、中から可愛い子供が生まれてくる。
「おまえ、うまそうだな。」と声をかけたハートを自分の父親
だと勘違いした赤ん坊のウマソウ^^;は、彼を追いかけるが…
そして、歴史は繰り返される。
自分の母親が自身にしてくれたことを、ハートはウマソウに
できるのだろうか。何しろどう見ても彼は餌に違いないのだ。
小さくて、可愛くて、自分をこれでもかと慕ってくるけれど、
相容れない者同士であることに違いない。そこをどうするか。
やがてハートは、ウマソウを捨てることを決意するが…。
それぞれの想いがグングン伝わる中盤以降、泣けて泣けて
どうしようもなかった。必死で守ろうとする父親と、意地でも
ついて行こうとする子供。声優陣がまた、巧い^^;プロに交り、
加藤清史郎くんがウマソウの声を演っているが、なんだ?と
思うほど巧い。彼は冒頭からずっとハートを父親だと信じて
ついてきたのだと思っていたが後半、アッサリと覆される。
たくましく育ってほしい^^;とハムのCMで言われていたのは
こんな子供の成長過程を意味していたのかvなんて感無量。
お父さん方、こんな息子に育ってくれたら…嬉しいよねぇ(T_T)
お母さん役・原田知世、バクー役・別所哲也も巧かったが、
他の声優や随所に流れる音楽にしても、かなりのプロ仕様。
…絵本はもっとほんわかとしているのだろうか。
食う食われるの生存競争の描き方もリアルで容赦ないが、
生きていくために必要なものは食べ物と、あと何だったかを
薄れてしまった記憶の中に再発見し今一度家族の在り方を
考えさせようと観客に問いかける力作である。
(自分を愛し、育ててくれた親を、子供は絶対に忘れない。)