劇場公開日 2011年5月14日

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「今から見ると別世界のような白人美男美女のハッピー恋愛ドラマ」ジュリエットからの手紙 徒然草枕さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0今から見ると別世界のような白人美男美女のハッピー恋愛ドラマ

2023年7月14日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

こんな直球一本やりドストライクの恋愛一直線映画を観たのは久しぶり。連想するのはメグ・ライアンとトム・ハンクスコンビの「めぐり逢えたら」「ユー・ガット・メール」だろうか。そういえばアマンダ・セイフライドはメグ・ライアンに似ているw

基本的に王道路線だから展開を読めることが多く、この辺で再会しそうだなと思うシーンでクレアはロレンツォと再会し、次はソフィが原稿をニューヨーカー編集長に見せるだろうと思うと、その通りに編集長は原稿を絶賛し、チャーリーが連れてきた女性は親戚だろうと思うと案の定従姉妹だったり…ということで、なにやら既視感満載なのである。

ストーリーの面白みは皆無、セリフも月並み、登場人物の関係もありきたり。ということで大きなディスアドバンテージを背負っているのだが、こういうどこのシーンもハッピー感溢れる恋愛映画が今ではあまりない(と思うw)ので、新鮮に感じるということはあるのかもしれない。
おまけに登場人物たちは美男美女の白人揃いで、BLMがどうしたとかルッキズムがこうしたというのとは別世界の産物。イタリアの名所や葡萄園もまるで観光映画のようではないか。

ところで本作は2010年の作品だが、その後のハリウッドは大きく様変わりしていく。
2016年のアカデミー賞では司会のクリス・ロックが同賞を「ホワイト・ピープルズ・チョイス賞」と揶揄し、それもあってか翌年の作品賞はゲイの黒人を描いた「ムーンライト」に授与された。ハリウッド映画は以後、これでもかとばかりに黒人キャストが画面を占め始め、歩調を合わせるかのように米国社会ではBLM運動が燃え盛る。
調子に乗ったクリスは2022年、ウィル・スミス夫人に人種差別紛いのジョークを飛ばして、ウィルにビンタを食らった挙句、2023年の司会は辞退したのだった。
他方、今からほぼ2週間前、米最高裁はアファーマティブ・アクションに違憲判決を下す――人種差別反対運動とそれに対する反動は、ことほどさように米国を揺るがしているのだが、ハリウッドもこうした時世を濃厚に反映する。

この観点から見ると、こうした白人美男美女のハッピー恋愛ドラマはもはや製作が困難なのではと想像する。ある意味、貴重な作品かもしれないと思うのである。

徒然草枕